JSIAM Online Magazine

学術会合報告

ベスト錯覚コンテストに参加して

小野 隼



2013年5月10日から15日までNaples, Florida, USAで開催される視覚科学協会(Vision Science Society)に参加した。以下では視覚科学協会をVSSとする。

 

今回、私は、第9回ベスト錯覚コンテスト(9th Annual Best Illusion of the Year Contest)の10人のファイナリストに選ばれたためVSSに参加することとなった。ベスト錯覚コンテストとは、VSSの年会のサテライトイベントとして毎年開かれている錯覚の新作を競うコンテストである。応募作品の中から、専門家による1次審査でベストテンが選ばれ、それがファイナリストとして決勝戦に臨み、1位から3位を決定する。今年のベストテンは、米国6、英国1、オーストラリア1、コスタリカ1、日本1、という顔ぶれだった。決勝戦の結果は、毎年、NatureやScientific Americanなどにも紹介され、速報HPには、数百万回のアクセスが殺到するなど、視覚科学の分野では大変注目されている大イベントである。
私は、「Rotation Generated by Translation」というタイトルでこのベスト錯覚コンテストに投稿し、ファイナリストとして選ばれた。私の作品は、二つの驚きがある。一つは、平行移動にも関わらず回転運動が生じるということ。インチワーム錯視を順番に起こすことで、回転運動に見せている。もう一つは、全く同じ形にも関わらず、逆回転が生じるということ。配置する場所を少しずらすことで位相がずれ、逆回転にすることが出来る。

 

決勝戦では、各グループが5分間のプレゼンを行い、会場にいるお客さんが最も面白かった作品に投票するというシステムになっている。このコンテストに参加するお客さんは、視覚に関する専門家だけでなく、一般の人も多いため、学術的なプレゼンは向いておらず、いかにお客さんを喜ばせるかが、勝敗を分けることとなる。私の錯視作品の中にこうもりが登場するものがあるので、私自身バットマンの格好となり、プレゼンを行った。10人のプレゼンが終わり、結果発表で我々の作品は見事に1位を獲得することができた。今までの研究を多くの方に認められたのだと思い、大変光栄に思った。
2位の作品は、それぞれの点は同じ動きをしているが、位相を変えると見え方が変わるというもの。
3位の作品は、3D眼鏡をかけると立体の街並が見えるが、実際は200ヤード離れた2枚の画像を組み合わせて作ったものなので、本当は正しいものではないというもの。

 

今回、我々が1位を獲得出来た勝因は、大きく分けて二つあると考えている。一つ目は今回の作品作成のメンバーであり、私の指導教員でもある杉原厚吉先生は、3年前に同コンテストで1位を獲得しており、事前に多くの情報を得ることができたことがあげられる。二つ目として、多くの方々にプレゼンの練習を見てもらい、アドバイスをいただくことが出来たことである。お忙しい中、時間を割いて練習に付き合っていただいた研究室のメンバーやポスドクの方々に、この場をお借りして御礼申し上げます。

 

今回のベスト錯覚コンテストで優勝出来たことに満足することなく、今後も錯視研究の発展に精進したいと考えている。



おの じゅん
明治大学大学院 先端数理科学研究科
[Article: G1304B]
(Published Date: 2013/08/06)