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九州大学マス・フォア・インダストリ研究所の拠点認定と今後の展開

梶原 健司



九州大学マス・フォア・インダストリ研究所(IMI)はアジア初の産業技術に関する数学研究の拠点として,平成23年4月に大学院数理学研究院から独立して大学附置研究所の形で設立され,平成25年4月には文部科学大臣より共同利用・共同研究拠点「産業数学の先進的・基礎的共同研究拠点」に認定されました.IMIは日本における数学系の共同利用・共同研究にかかわる研究所として統計数理研究所,京都大学数理解析研究所に続くものです.

IMIの理念であるマス・フォア・インダストリ(Mathematics for Industry, MI)とは,純粋・応用数学を流動性・汎用性をもつ形に融合再編しつつ産業界からの要請に応えようとすることで生まれる,未来技術の創出基盤となる数学の新研究領域を意味します.IMIでは母体である数理学研究院と緊密な連携を取りながら,大学院数理学府の教育に責任をもち,MIの具現化と研究人材育成をすすめています.

MIを推進・展開していくために,IMIは26名の専任教員(教授12名,准教授10名,助教4名)と4名の学術研究員,24名の客員教員を配置しています.専任教員は,数学テクノロジー先端研究部門,応用理論研究部門,基礎理論研究部門,および数学理論先進ソフトウェア開発室に分かれて研究活動を行っています.教員の研究分野が,産業応用に近い分野からいわゆる純粋数学まで幅広いスペクトルに渡っていること,さらに,純粋数学をバックグラウンドとする者も実際に産業界との共同研究を推進していることは,世界の他の応用数学系の研究所にはないIMI独自の特徴で,MIの具現化のために極めて重要です.

IMIでは,MIを推進するために以下の事業を行っています.

(1) 国内外の産業界の要請に応える共同研究,およびそれを支える多様な数学研究

(2) 共同利用研究事業

(3) 若手研究者の育成

(4) ワークショップ・国際会議の企画・運営

(5) スタディグループの企画・運営

(6) 数学キーテクノロジーに関するチュートリアルの企画・運営

(7) 産学連携・異分野連携セミナーの開催

(8) 技術相談

(9) 学術誌(Journal of Math-for-Industry),会議録,レクチャーノート(MI Lecture Notes)などの出版

(10) インターンシップ(博士課程長期,修士課程中期)のマッチング・運営

(11) 社会に役立つ数学という側面からの教育実践(数理学府・理学部数学科)

(12) 啓蒙活動

字数の関係で全てのことには触れませんが,以下に簡単にご説明します.まず,(1)で多様な数学研究を担保することはMIの根幹であり,将来の産業数学のシーズを育てるだけでなく,現時点でも企業との共同研究で役立っています.また,IMIでは産学連携担当の教授を配置しており,マッチングの成功により純粋数学系の教員も共同研究に参画して成果を挙げています.

(4)に関して,GCOEプログラムがForum "Math-for-Industry"を平成20年から毎年開催してきました.GCOEプログラムは平成24年度で終了しましたが,今年もIMIが主催する国際会議として11月4日から8日まで九州大学西新プラザで開催予定です.詳細はhttp://fmi2013.imi.kyushu-u.ac.jp/index.html をご覧ください.

(5)のスタディグループとは,産業界における数理的問題に関する合宿型・問題解決型のワークショップで,企業の方に問題を出していただき,興味を持った聴衆の中の研究者が,概ね一週間の会期中に問題提出者と協力して解決を目指します.完全解決に至らなくとも,産業界との共同研究や連携活動のシーズを見出したり,大学院生やポスドクなど若手研究者のキャリアパスの多様化も生み出すなど大きな成果があり,IMIの中核的な事業の一つです.4年目にあたる今年も東京大学大学院数理科学研究科と協力し,7月31日から8月2日までは九州大学で,8月5日から6日までは場所を移して東京大学で開催されました.http://sgw2013.imi.kyushu-u.ac.jp/index.html をご参照ください.

(7)に関しては,産業界の研究者に数理的な問題について講演をしていただくIMIコロキウムを毎月開催しています.原則的にIMI所員は全員参加で大学院生やポスドクの参加も多く,活発な講演会です.

(9)について,IMIでは査読付き欧文学術誌Journal of Math-for-Industryを出版しており,Mathematical Reviewのレビュー対象となっています.また,講義録や会議録としてMI Lecture Notesシリーズを刊行しています.例えば,「数学モデリング」をキーワードにIMI全体で企画した「科学・技術の研究課題への数学アプローチ—数学モデリングの基礎と展開−」が平成25年2月にMI Lecture Notes 46巻として出版されており,http://hdl.handle.net/2324/26521から入手できます.また,出版と時期を合わせ IMIチュートリアル「数学モデリングの基礎と展開」を開催しました.このチュートリアルには100名を越える参加者があり,一部の講演のビデオはIMIのウェブページで公開しています.

(10)はMIを支える基盤の一つで,数理学研究院と連携して実施しています.特に,大学院数理学府博士後期課程機能数理学コースの学生に必修として課している3ヶ月以上の長期インターンシップは日本では他に類を見ない活動で,実際にそこから共同研究や就職に結びついた例も多く,産学連携やキャリアパスの多様化に大きく貢献しています.

最後になりましたが,(2)は共同利用・共同研究拠点としての中核事業で,平成23年度から試験的に実施していましたが,拠点認定を受けて平成26年度から本格的に実施します.今年度の共同利用研究には研究集会と短期共同研究の2つのカテゴリーがあります.後者は1週間程度IMIで集中的に共同研究を実施するもので,テーマは知財に直結するような狭い問題よりは,ある程度の普遍性をもった問題を重視しています.今年度は研究集会4件,短期共同研究1件が既に採択されており,7月31日〆切で後期実施分の計画として研究集会1件,短期共同研究を2,3件程度募集しました.平成26年度の共同利用研究計画は今年の11月末頃に公募開始予定です.なお,共同利用拠点としての事業については,産業界・他大学の有識者が多くを占める,拠点運営委員会やInternational Advisory Board Meetingなどで議論し,新しい形態を模索しているところです.

以上のように,IMIでは日本における産業数学・応用数学の新しい拠点として,手探りながらさまざまな事業を実施しています.まだよちよち歩きの研究所ですが,広い意味での産業数学・応用数学研究と産学連携の拠点となるよう,今後も活動を展開して行きます.皆様の研究活動の推進のために,IMIを積極的にご活用ください.どうか皆様の暖かいご理解とご支援をよろしくお願い致します.

IMIウェブページ http://www.imi.kyushu-u.ac.jp/index.html



かじわら けんじ
九州大学マス・フォア・インダストリ研究所
[Article: D1306B]
(Published Date: 2013/09/24)