JSIAM Online Magazine

学術会合報告

2016年度応用数学合同研究集会参加報告

古谷 倫貴



2016年12月15日~17日に,龍谷大学瀬田キャンパスにおいて2016年度応用数学合同研究集会が行われた.この研究集会は「龍谷大の研究集会」というだけで多くの方に伝わる程に定着しているものである.私がこの集会に初めて参加したのは修士2年のときで,それ以降は自分の中でかなり重要な位置付けとしてほぼ毎年参加している.その理由は,日本数学会応用数学分科会主催の大規模な集会であるということも一つであるが,何より毎年この時期に開催されるこの集会がその年の一区切りになるためだ.参加しないと気分良く年越しができないような気がしてしまう.この研究集会の最大の特徴は,離散系と解析系の二つのセッションが同時に行われることにある.応用数学に分類される分野は多岐に渡り,同じ分科会に属していたとしても数学会では参加する日程は人それぞれである.そのため,離散系の中のグラフ理論を研究している自分にとっては,解析系との方々とお会いできる数少ない機会である.また,分野によって異なるのかも知れないが,他より少し長めの講演時間(ここ数年は一件あたり25分)が設定されており,講演を短く調整することが下手な自分としてはありがたい限りである.

今回私は「Some bounds on the domination number of digraphs」というタイトルで講演を行った.詳細は省略するが,内容を簡単に述べるならばダイグラフをある補助的二部グラフに帰着させることで,既存の定理の再証明や新たな定理の構築を行おうという試みについてである.二部グラフを用いること自体は既知の手法であるが,それを用いて二つのグラフの概念を結び付けられるという発見が気に入ったため,講演を行うことにした.ところで,今回講演を聴いていて少し驚いたことがあった.千葉周也先生(熊本大学)の講演でも全く同じ二部グラフを構成しただけでなく,長さ6以上の閉路に着目するという点まで私の講演と共通していたことである.千葉先生の講演タイトルは「二部グラフ上の完全マッチングを含む2-因子と有向グラフ上の有向2-因子」で,私の研究内容と目標は全く異なっている.改めて考えれば使った道具が同じということだけではあるが,私の講演の中ではキモとなる箇所であったため,非常に印象深かった.

話は変わるが,この応用数学合同研究集会では,2013年に応用数学研究奨励賞という若手研究者を対象とした賞が設置された.昨年度は縁あって離散系においては私が受賞させていただいた(本稿の執筆者に指名していただいたのも,少なからずそのことが影響していることであろう).この賞の設置に伴って,ここ数年は若手研究者を中心に講演件数が増加しており,質疑応答もかなり熱の入ったものとなっている.特に離散系では賞が設定された研究集会が少なく,数学会で授賞式が行われることも併せて,良い目標になっているようだ. 一方で,時間確保のために昨年まで行われていた合同セッションの招待講演がなくなってしまった.解析系の方の講演を予備知識なしに聞くことができる貴重な機会が失われたのは非常に残念であったが,その分一般講演を盛り上げていかなくてはならないと切に感じる.

しかし,合同セッションがなくなり離散系・解析系の関係が希薄になってしまったかと言うと,むしろその逆である.例えば今年は,毎年解析系の方々が集まるお店に離散系が合流するという形で中規模の(非公式)懇親会が行われた.そのためか,公式な合同懇親会では例年以上に分野をまたいだグループでの会話がはずんでいたように見えた.また,この研究集会とは直接関係ないが,2017年2月8日~10日に,佐藤巌先生(小山高専)退職記念と称して「軽井沢グラフと解析研究集会」が解析系と共同開催された.このように,最近は解析系の方々と(お酒を交わしながら)話をする機会が多くなっている.それも佐藤先生をはじめとした多くの先生方のお力添えあってのことだと思う.

合同セッションがなくなり,この研究集会がどのような雰囲気に変わるのか気になっていたが,離散系・解析系の枠組みを超えて盛り上げていこうという意識が強くなったような気がする.来年度以降もますます進化した「龍谷大の研究集会」に参加・協力していきたい.



ふるや みちたか
北里大学
[Article: G1702B]
(Published Date: 2017/04/19)