JSIAM Online Magazine


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学術会合報告

第43回数値解析シンポジウム実施報告

大江 貴司,河野 敏行



今回で43回を数える数値解析シンポジウムが応用数理学会・岡山理科大学共催の元,沖縄県石垣市の日航八重山ホテルにて開催された.著者らは実行委員として本シンポジウムの企画・運営に携わった.数値解析シンポジウムの紹介自体はすでに今倉暁氏(筑波大学)による第41回シンポジウムの参加報告でなされているので,本稿では今回の企画段階からのいきさつを含めて,実行委員会の立場から参加報告をさせて頂こうと思う.
今回のシンポジウムを前回の実行委員会(愛媛大学)から引き継ぎ,さてどこで開催しようかと実行委員会で相談していると,河野から唐突に「せっかくだから石垣でやりましょう!」との提案.参加が見込まれる方々の反応を探るため,第42回シンポジウムの大シンポジウム会場で案を公表すると,若い参加者の方々からどよめきがおこった.もちろん歓迎の意味である.ここからすべてが始まった.
提案をしてはみたものの実行委員の中に石垣島に土地勘がある者はおらず,すべては手探り状態.まずは石垣市のホテルの状況や台風の時期などを調査したが,なかなか大きな宴会場を持つ安価なホテルが見当たらない.いろいろ問い合わせた結果,日航八重山に決定.時期については台風シーズンの始まる前ギリギリの6月初旬とした.一番の心配は開催案内のホームページ立ち上げが遅れたこと,また開催地が遠方であることによる参加者および発表の減少であった.しかし,ふたを開けてみると59名の参加者,31件の一般講演,4件のポスター発表と例年に劣らない参加者,講演を集めることができ,当初の心配は杞憂におわったことで実行委員会としてはホッとしている.遠方まで足を運んで頂いた参加者の皆様の熱意に感謝する次第である.
さてシンポジウムの内容であるが,一般講演のテーマは線型計算,微分方程式の数値解法,精度保証計算,可積分系,画像処理と例年にも増して多種多様なものであった.本シンポジウムの特徴は,このような多種多様の分野の講演が一会場で行われることでそれぞれの分野における先進的研究を垣間見ることができるとともに,他分野の観点からの意見を得ることができることと考えているが,今回もそれを達成できたと自負している.
今回のシンポジウムにおいては2件の特別講演を一般への公開という形で行った.一件目は五十嵐正夫氏(日本大学)・篠沢達也氏(日本大学)により「石垣島の100年間の気温の特徴」というタイトルで行われた.開催地である石垣島について約100年分の最低気温,最高気温のデータを解析し,その特徴の分析が行われた.100年分というビックデータが効率良く処理され,温暖化の気温上昇の様子などが分かり,大変興味深い内容であった.もう一件は,堀宗朗氏(東京大学)により「連続体力学問題の数値解析に関する二つの話題」と題して行われた.連続体力学において降伏や亀裂の発生・進展を伴うような現象を扱う場合には,局所的に構成則の正定値性が失われる,また新たな不連続面が生成するなど数値的に扱うことが極めて難しい問題がおこる.現在,これらの問題に対する数値的手法は確立していないが,発表ではその確立に向けた斬新なアプローチが示され大きなインパクトを感じた.
次年度のシンポジウムであるが,山本野人氏(電気通信大学)を実行委員長として山梨県で開催される予定である.多種多様な分野の研究者の交流を深めることのできる本シンポジウムに来年も多数の研究者が参加されることを期待したい.
最後になるが,嵩西淳氏(石垣中学校教諭)には現地の情報や広報について多大なるご協力を頂いた.ここに感謝の意を表する.

Invited Talk by Prof. Igarashi (Nihon Univ.)  五十嵐正夫氏(日大)による特別講演

Invited Talk by Prof. Hori (Univ. of Tokyo) 堀宗朗氏(東大・理研)による特別講演

Photo of all participants 参加者集合写真



おおえ たかし,こうの としゆき
岡山理科大学理学部,岡山理科大学総合情報学部
[Article: G1406D]
(Published Date: 2014/10/31)