藤江 健太郎
2014年7月7日から7月11日にかけてスペイン、マドリード自治大学において「10th AIMS International Conference on Dynamical Systems, Differential Equations and Applications」が開催された。マドリードは7月初旬でも酷暑が続き、眩しい日差しと気持ちよく乾いた空気がとても印象に残っている。会場は街の中心地から鉄道に乗って20分ほどで行ける場所であり、交通の便は良好であった。筆者はAIMSの事務局を通してホテルの予約をしたのだが、このホテルからは朝夜に会場とのバスが手配されていた。
まず、会議全体の様子を振り返ろう。初日の午前中のみ別会場の大きなホールで講演が行われた。会場の大きさ、参加者の多さを見て、「あぁ、こんなにも大きな国際会議に参加しているのか」と感慨を覚えた。特に最初の講演者であるFefferman先生 (Princeton大学)の総合講演が印象に残っている。筆者にとっては雲の上の研究者であり、大舞台の中で冗談を交えながら楽しそうに講演をする様子に圧倒されてしまった。正午には、本会場のマドリード自治大学に移動し、炎天下の中、屋外での立食カクテルパーティーが行われた。多くの日本人の研究者に挨拶をしたことを覚えている。国内での研究集会と比べて、むしろ海外の研究集会に参加しているからこそ、日本人研究者と交流を深めることができた。午後からはマドリード自治大学で各セッション (主に特別セッション)に分かれて行われた。以後4日間、朝9時からの総合講演で始まり、計136ものセッションが夕方まで開催されるというスケジュールであった。
次に、筆者が講演を行った特別セッションの話に移ろう。筆者は、Winkler先生 (Paderborn大学)とTello先生 (Politecnica大学)に招待され、走化性モデルに関する特別セッションで講演をした。聴講した講演の中では、活躍している研究者の講演内容・発表方法の工夫などが大変勉強になったが、それ以上に筆者と同世代の学生による講演が強く印象に残った。特にBurczak氏 (Polsh Academy of Sciences)、Cao氏 (Dalian工科大学)、Lankeit氏 (Paderborn大学)の気迫に満ちた講演に刺激を受けた。このセッションには、筆者が日々接している論文の著者たちが一堂に会しており、「ここは筆者自身の研究の価値が分かる場所だ」と気が引き締まる思いであった。そして、今が筆者自身の研究を直接伝えられるチャンスだ、ということが鋭い緊張と大きな高揚感を募らせた。講演間のランチタイムや休憩時間も筆者にとって大きなチャンスであった。「できる限り沢山の研究者と研究交流をしたい!」と思い、何度も緊張しながら声をかけたことを覚えている。声をかけた中で特に記憶に残っているのは、Tao先生 (Donghua大学)である。精力的に活動している研究者で、筆者のあこがれている数学者のうちの一人である。会話の中で論文作成の話になると、「40ページ位の論文なら2日で書ける」という言葉に驚嘆した。また、Tao先生が「pardon」を連発しながら様々な研究者と会話をしている姿を見て、筆者自身が鼓舞された気持ちになった。
さて、筆者自身の講演の話に移ろう。筆者は特異性をもつ感応性関数のある走化性モデルの解の有界性について講演を行った。指導教員の横田先生 (東京理科大学)との特訓により、楽しみながら無事に講演を終えることが出来た。質疑応答では、前述のTao先生がコメントをくださった。講演後にTao先生にお礼を述べに行ったところ、「いい講演だった。」(やったぁ!!)、「ところで、君が講演中に課題として紹介した問題だけど・・・もう僕の頭の中には解決のアイデアがある」(えっ・・・)、「君が早く考えないと、僕が先に論文を書いてしまうよ。頑張りなさい。」(はい!!)というユーモアあふれる励ましの言葉を頂いた。
ここで、次回のAIMS国際会議は2年後にアメリカ、フロリダ州オーランドで行われることを告知しておく。
最後に講演の機会を与えてくださったWinkler先生とTello先生にこの場をお借りして感謝を述べたい。
ふじえ けんたろう
東京理科大学 理学研究科
[Article: G1407C]
(Published Date: 2014/09/13)