石上 裕之
2014年7月28日から30日にかけて朱鷺メッセ新潟コンベンションセンターで行われた並列/分散/協調処理に関する『新潟』サマー・ワークショップ (SWoPP 新潟 2014)に参加した。本ワークショップは情報処理学会と電子情報通信学会の研究会、そして、本学会の「行列・固有値問題の解法とその応用」研究部会の計7研究会の合同で開催されている。最大4つのセッションが平行で開催され、今年は計140件の講演発表があった。また、1日目と3日目の晩には、2件のBoF (Birds of a Feather) セッションも行われた。会場は信濃川の河口に位置し、少し北へ向かえば佐渡島行きの船のターミナル船があるという日本海を眼前に望むロケーションであった。
「行列・固有値問題の解法とその応用」研究部会のセッションでは、1日目に、3セッション計7件の講演発表があった。第1セッションでは、アクセラレータ上での数値計算におけるアルゴリズム実装の最適化について2件の講演がなされた。第2セッションでは、一般化固有値問題および流体計算の解法について3件の講演がなされた。第3セッションでは、超並列環境において計算時間のボトルネックとなる通信時間の削減について2件の興味深い講演がなされた。多くの講演が、本ワークショップのテーマである「並列/分散/協調処理」に関連深いものであった。特に、筑波大学の今倉先生の講演「周回積分型固有値解法の数理的耐故障性について」では、超並列計算機システムの異常に対するアルゴリズムの数理的耐故障性が検証されていた。計算の高速化に並列計算が不可欠となりつつある今日において、計算機システムの異常発生時にもロバストな計算が保証されることは重要である。その意味でアルゴリズムの理論解析の重要性を示す、印象的な講演であった。
今回筆者は、HPC研究会において講演を行った。HPC研究会は、1日目から3日目にわたって15セッション計46件の講演で構成されていた。HPC研究会の講演は、行列演算や多倍長計算、アクセラレータを使った高速化手法といった数値計算絡みの話題のみならず、低消費電力技術やストレージといったハードウェア寄りの話題まで多岐に渡る。このため、専門外の話題では小難しく感じてしまうことも多いが今後の技術動向を知る良い機会でもある。中でも講演や質疑で議論、言及されるプログラミングのテクニックや、計算科学アプリケーションの話題については、非常に勉強になったと感じた。
また、1日目の晩に開催されたBoFセッション「ビッグデータ研究最前線:最新研究事例の紹介から楽しい研究の始め方まで」にも参加した。このセッションでは、前半で7名のパネリストによる研究事例の紹介が行われ、後半でパネルディスカッション形式の研究討論が行われた。事例紹介は非常に興味深いものが多く、また、同時に語られた苦労話からはビッグデータ研究という分野の学際性を色濃く感じた。夜遅くまでの開催であったにもかかわらず多くの研究者が最後まで居残り、講演や討論に耳を傾けていた。
BoFセッションは他のセッションとは異なり、全ての研究会の研究者が一つの部屋に集まる。他にも、2日目の晩には懇親会が行われ、研究会の垣根を越えた交流が行われた。このような交流は本ワークショップの一つの特色であり、また例年多くの人が参加したいと思う大きな魅力になっているのではないかと感じた。
来年以降も本ワークショップがより一層発展していくことを期待したい。
いしがみ ひろゆき
京都大学 大学院情報学研究科
[Article: G1409A]
(Published Date: 2014/12/15)