JSIAM Online Magazine


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学術会合報告

第2回 JST CREST「数学」領域横断若手合宿の報告

中野 直人



去る2015年3月9日から11日にかけて,第2回 JST CREST「数学」領域横断若手合宿@志賀島が福岡県福岡市にある休暇村志賀島において開催され成功裡に終わりました.これは JST「数学」領域(研究総括:西浦廉政)における,CRESTチームの垣根を越えた交流を目的に企画されたものです.

今回は,今年度新たに発足したJST数学関連2領域:「数理モデリング」領域(研究総括:坪井俊),「数学協働」領域(領域総括:國府寛司)からも参加があり,微分方程式,トポロジー,統計,数値解析,数理モデル,流体工学,力学系,ロボティクスという多岐に渡る分野から意欲的な21名の若手が一堂に会することとなりました.今回の合宿の形式としては,

  • 「区別の難しい曖昧な概念や物事」や「既にある区別とは異なる切り口」に関わるトピックを数理的に表現・モデル化するワークショップ
  • 参加者個人で持参したポスターによるポスターセッション

の二本立てで行いました.

このワークショップでは,参加者を分野を固めずに四つの班に分け,班毎に議論するトピック(「ミクロ・メソ・マクロ」,「連続と離散」,「統計と予測」,「複雑さの表現」)を決めました.最終日の発表まで限られた時間の中,各班は漠然とした問題意識から具体的な発表にまで熱心に内容を詰め,持ち時間を十分に使った中身のある発表をおこないました.これは参加者の意欲的な姿勢によるものであり,良い「横」のつながりになったと思います.また,学生の積極的な姿勢も印象的でした.各班の最終発表は学生が担当し,発表資料を整えるために先輩研究者と相談する姿が見かけられました.発表内容だけでなくプレゼンテーションの準備についてもアドバイスを受けていたようで,これにより強い「縦」の結び付きも得られたように感じました.

また,1日目と2日目に計2回おこなったポスターセッションは,ワークショップで別の班となって関われない参加者と議論をする良い機会になりました.幅広い分野からの参加者が持参したバラエティに富んだポスターが揃い,それぞれ活発な議論がおこなわれていました.ざっくばらんな雰囲気でおこなわれた討論は,ワークショップにおける集中した議論と対照的であり,横のつながりをさらに強固にするものとなりました.

合宿場所として選定した休暇村志賀島は,玄海国定公園内に位置している風光明媚な場所であり,海の中道によって九州本島と陸続きになってはいるものの,その名の通りまさに島という合宿に格好の閉鎖的環境となりました.参加者はみな気を散らすことなく議論に集中できたことを考えると,志賀島に場所を選択したことも合宿成功の要因の一つと言えます.この合宿では,参加者の持つ多様な研究背景を緯糸に,教員から学生までの厚い層を経糸にし,見事に分野横断連携の一つの姿を織り上げることができたと思います.これを契機とした今後の協働に期待が寄せられるところです.

今回の若手合宿の開催にあたり多くの方々からご協力をいただきました.西浦「数学」領域総括からはこのような機会をいただき,坪井総括,國府総括やCREST各チームリーダーの諸先生方には本合宿の趣旨にご賛同いただきました.また,JSTの高見沢一彦主任調査員には企画・運営で多大なるご助力を賜りました.この場を借りて御礼申し上げます.

【運営幹事】
中野 直人 JSTさきがけ・北海道大学(代表)
大林 一平 京都大学
川原田 茜 静岡県立大学
林  邦好 岡山大学
廣瀬 三平 芝浦工業大学



なかの なおと
JSTさきがけ・北海道大学
[Article: G1503B]
(Published Date: 2015/05/02)