学術会合報告

Workshop on Numerical Algebra, Algorithms, and Analysis 参加報告

相原 研輔



2016年1月11日~12日,国立情報学研究所にて,Workshop on Numerical Algebra, Algorithms, and Analysisが開催された.本ワークショップは,速水謙教授(国立情報学研究所 情報学プリンシプル研究系,および総合研究大学院大学 複合科学研究科 情報学専攻)の還暦を記念したものである.数値代数, 数値解析, 数値アルゴリズムに関わる国内外の研究者ら約30名が集い,興味深い研究発表と活発な意見交換が行われた.筆者も講演者の一人として参加させて頂いた.

本ワークショップは,実行委員であり速水研究室の出身でもある保國惠一氏(筑波大学)による「Happy birthday, Professor Hayami!」との開会挨拶から始まった.2日間にわたる研究発表は,速水教授によるご講演に加えて,13件の招待講演と速水研究室に在籍する博士課程学生による2件の講演で構成され,シングルセッションで行われた.招待講演者のうち6名は海外からの参加であった.

速水教授のご講演は「特異に魅せられて(Enchanted by Singularity)」と題するもので,これまでの経歴の紹介に加えて,「Quadrature for Nearly Singular Integrals」と「Krylov subspace methods on singular linear systems」という2つのテーマについて研究成果を振り返られた.公開されている論文から研究内容を知ることはできるが,速水教授の取り組みについて生の言葉で聞けたことは大変刺激的であった.また,手書きの研究資料や時代を感じさせる昔の写真にも目を引かれた.

参加者による研究発表は,ワークショップの中心的なテーマである大規模な線形方程式や最小二乗問題に対する反復法とその前処理,正則化法などに関する話題が多かったが,これらに留まらず,固有値解法や最適化アルゴリズムの解析と応用,行列関数の微分に関する話題など,互いに関連しつつも多様な講演があった.筆者のような若手研究者にとっては,近年の国内外の研究動向について理解が深められ,貴重な学術交流の場となった.ワークショップのホームページ(http://www.cs.tsukuba.ac.jp/~morikuni/WNA3KH/index_jp.html)には,各講演の概要が掲載されているので,ぜひ参照頂きたい.

また,速水教授の還暦記念ということもあり,招待講演者による講演は研究内容とは別に様々な工夫がなされていた.Lothar Reichel教授(Kent State University)は,画像復元に関する数値実験において,ノイズを含んだ速水教授の画像を復元する例を取り上げて,会場を沸かせた.Zhong-Zhi Bai教授(Chinese Academy of Sciences)は,特異な線形方程式系に対する反復法について発表されたが,時間半ばにして講演を終え,後半は速水教授との昔懐かしい写真を音楽に合わせて紹介された.曽我部知広准教授(名古屋大学)は,複素対称行列向けのKrylov部分空間法について発表されたが,学生時代に受講した速水教授の講義について,当時の授業ノートを持参し,思い出を語られた.その他にも各講演者は思い思いにメッセージを伝えており,速水教授の人望の厚さをあらためて感じさせるものであった.

2日目のお昼休みには,速水研究室の出身者や友人,参加者から速水教授へプレゼントが送られた.また,残念ながらワークショップに参加できなかった方々から届いたメッセージビデオなどの紹介も行われた.特に,海外からのメッセージは20件以上にのぼり,速水教授がいかに国際的に活躍され,国を超えての繋がりを大切にしてきたかが伝わってきた.夜には,懇親会が催されたが,参加者からのメッセージに続き,実行委員であるNing Zheng氏(総合研究大学院大学)を中心に「Happy Birthday to You」を歌った.速水教授は赤い「ちゃんちゃんこ」をお召しになった姿で懇親会に参加し,長年続けられているクラリネットの演奏を披露された.研究発表を行う姿とは違った一面も見られ,懇親会は和やかな雰囲気のなか幕を閉じた.

講演をされる速水謙教授

 

懇親会にて(左から Jun-Feng Yin教授,Xiaoke Cui氏,Ning Zheng氏,速水謙教授,保國惠一氏,杉原光太氏)



あいはら けんすけ
東京理科大学 理学部 数理情報科学科
[Article: G1512B]
(Published Date: 2016/03/21)