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学術会合報告

「応用解析研究会 〜可積分系から計算数学まで〜」 参加報告

福田 亜希子



2016年5月19日~21日の3日間,大阪・天満駅近くの天満研修センターにて,「応用解析研究会~可積分系から計算数学まで~」が開催された。本研究会は京都大学大学院情報学研究科の中村佳正教授の昨秋の還暦を記念して開催されたものである。研究室出身者や中村教授の共同研究者をはじめ,可積分系・計算数学分野の研究者など中村教授にゆかりのある方々20名の講演および若手研究者ら14名のポスター講演が行われた。研究会と後述する祝賀会とをあわせて総勢100名を超える参加人数であった。オープニングでは,実行委員の代表を務める近藤弘一教授(同志社大学)からのご挨拶があり,特に,本研究会を主催する「計算数学研究会」についての紹介もあった。ここで,計算数学研究会(http://www-is.amp.i.kyoto-u.ac.jp/lab/cmc/)について簡単に紹介させていただきたい。計算数学研究会は中村・辻本研究室主催で毎年行なわれている合宿形式の研究会であり,2003年度に第1回が開催され,今年で第14回目の開催を迎える研究会である。著者自身もこれまでに9回参加させていただき,最近では運営にも携わらせていただいている。講演時間は40~60分程度と長めに設定されており,普段の学会等における時間が限られた中での発表とは異なり,研究内容に関する詳しい説明を聞くことができるのが特徴である。応用解析研究会はこの計算数学研究会の「特別回」という位置づけであり,以前に計算数学研究会や関西可積分系セミナー(KISSセミナー, http://www-is.amp.i.kyoto-u.ac.jp/lab/kiss/)で講演された方々に研究の潮流や最新の研究成果についてお話頂く,という趣旨である。

中村教授は可積分系をはじめ,いわゆる応用可積分系研究に関して精力的に活動しておられる。日本応用数理学会の研究部会の一つである「応用可積分系研究部会」の設立にも中心的な役割を果たされ,現在,我々が応用可積分系研究部会で活動できるのは中村教授のおかげと言っても過言ではない。研究会における講演者および参加者は可積分系の研究者から数値解析系の研究者まで幅広く集まっていた印象である。1つの研究会にこのような複数の分野の研究者が多く集まっている珍しい研究会であったと感じた。講演者も,初学者向けの説明を加えたり,異分野との関連について触れたりと,専門外の参加者に配慮しておられる印象であった。各講演者の講演タイトルは研究会HP(https://sites.google.com/site/ouyoukaiseki/)に委ねるが,研究会のサブタイトルの通り,連続・離散・超離散可積分系をはじめ,行列解析,数値解析から応用解析にいたる幅広い内容であった。中村教授の講演は「離散戸田方程式に基づくランチョス法とガウス型積分公式再考」と題して行なわれ,ランチョス法に現れるランチョス多項式の拡張が離散戸田方程式(qdアルゴリズム)の構造を持つこと,さらにその応用として,ガウス型積分公式の計算が可能になることが述べられた。また一つ,可積分系の持つ新たな「機能」が明らかになり,大変興味深い内容であった。

2日目の夕方には,中村教授の還暦を祝う祝賀会が旧桜宮公会堂にて行われた。研究会の会場からはバスで移動し,移動後にはポスターセッションが行われた。著者自身もポスター発表を行なっていたため,他の発表を聞くことができなかったのは残念であるが,とても活発に議論がなされている雰囲気を感じた。ポスターセッションの会場が結婚式を行なうような豪華なチャペル(の周り)だったことには驚いた。祝賀会では,中村教授の経歴や業績の紹介があり,続いて,研究者仲間,研究室の秘書の方や卒業生等の代表から中村教授へのお祝いの言葉が述べられた。また,中村教授と奥様がステージにご登壇され,赤い“ちゃんちゃんこ”ならぬ赤い“Tシャツ”と記念品・花束が贈呈された。赤いTシャツについては,「ちゃんちゃんこは普段着る機会はないが,Tシャツであれば普段も着られるから」という中村教授からのリクエストとのことであった。

また,研究会終了後には,「大阪 真田幸村ゆかりの地めぐり」と「大阪観光クルーズ 大阪城・中之島めぐり」という2種類のエクスカーションが企画されており,参加者へのホスピタリティを感じた。

還暦とは,干支が一巡し,生まれた年の干支に戻ることであり,文字通り,暦が還る,という意味を持つ。昔は長寿を祝う意味があったようであるが,最近では人生の節目,第二の人生のスタートという意味合いの方がしっくりくる。最後に,この場をお借りして,中村教授の今後の益々のご健勝,ご活躍をお祈り申し上げます。

中村佳正教授の講演

祝賀会での集合写真



ふくだ あきこ
芝浦工業大学システム理工学部数理科学科
[Article: G1606A]
(Published Date: 2016/08/07)