佐々木 多希子
2016年熊本地震で犠牲になられた方々のご冥福をお祈りするとともに,被災された方々に心よりお見舞い申し上げます.
- 開催地について
2016年6月6日から8日まで鹿児島県 霧島温泉郷 霧島ホテルにて,第45回数値解析シンポジウムが開催されました.霧島ホテルは鹿児島空港から車で約30分ほどの場所にある,温泉が自慢のホテルです.このホテルには奥行き250mの掛け流しの大浴場,また泉質の異なる4種類の湯があり,色々な種類の霧島の温泉を存分に楽しむことができました.お風呂がすごいということは前もって知っていましたが,実際にその広さと素晴らしさを目の当たりにして,本当に感動いたしました.1日に何度も,各セッションの合間を縫って温泉に入られている方もたくさんいらっしゃいました.また,夕食時には,ライトアップされた100年杉庭園にとても心が癒されました.
- 数値解析シンポジウムについて
このシンポジウムは,数値解析に関係する研究者が集い,合宿形式で討論を重ねる研究集会です.今回の参加者は約40人で,大学の先生方と学生さんが中心でした.今回は1件20分間の口頭発表に加え,例年とは違った試みとして,従来のポスター発表の代わりに,各自がノートパソコンを使って,説明をポスター発表の要領で行うPC講演セッションが設けられました.
口頭発表では精度保証つき数値計算や,構造保存数値解法など馴染みのある分野の他にも,普段はあまり聞くことができない工学系の数値計算の話など,様々な分野の講演を聞くことができました.暖かな雰囲気の溢れる会場で,講演の関係者だけではなく多くの研究者によって,質問や意見交換が行われました.
新しい試みであるPC講演セッションは,個人的にはとても良かったのではないかと思います.スライドの方が,ポスターよりも多くの内容を盛り込めますし,動画を見ることもできるので,内容を理解しやすいと思いました.また,従来のポスター発表では,ポスターの下部を見るためしばしばかがまなければならず,窮屈な姿勢に不便を感じることがあったのですが,ノートパソコンを使った発表では,終始目の高さに画面があるため,楽な姿勢で聞くことができ,説明に集中することができました.
- 懇親会について
私はこれまで,若手研究者だけの研究集会には参加したことがありましたが,幅広い年代の先生方が参加されている合宿形式の研究集会への参加は,今回が初めてでした.合宿なので夜遅い時間まで,普段話すことができない先生方と話をすることができ,親睦を深めることができました.たくさんの先生方とお話をさせて頂きましたが,その中でとても印象的だったエピソードを一つご紹介いたします.
お酒も進み,水割り用のアイスペールの中には氷が溶け,水と氷が半分ずつになっていました.気をきかせてくれた学生さんが,氷が溶けないように,水を捨てようと立ち上がりました.その時,電気通信大学の山本野人先生が,「本当に水が無い方が氷は溶けにくいの?」と問いかけました.学生さんが「普段の経験から,水が無い方が氷は溶けにくいと思う」と答えると,山本先生は,「それを数学的に説明することはできるのか?」と続けて問われました.そこで,その学生さんだけではなく,その場にいた全員がその問題について考えることになりました.意見は半分に分かれ,その場にいた全員が,その問題についての自分の考え,またそのように考える理由を説明しました.しかしながら,全員が納得できるような数学的な説明は誰もできませんでした.全員の説明が終わった後に,実際に氷だけが入ったグラスと水と氷が混ざったグラスを比べて,どちらが溶けにくいかを実際に実験をしたところ,氷だけの方が溶けにくいことが分かりました.今回のことで,氷の溶けにくさのような身近な問題でさえ,私たちは正しく予測をすることが難しいこと,また,だからこそ数値シミュレーションが大切であることを,再認識しました.
あっという間の三日間でした.本当に良い思い出です.このような素晴らしい研究集会を企画,運営してくださった先生方に心からお礼を申し上げます.
ささき たきこ
早稲田大学グローバルエデュケーションセンター
[Article: G1606B]
(Published Date: 2016/09/16)