研究部会だより

「数論アルゴリズムとその応用」研究部会の紹介

松尾 和人



本研究部会(略称JANT, Japan Algorithmic Number Theory)は,豊穣な研究領域が広がる数論アルゴリズムと,現代情報社会の安全性を支える暗号理論等の応用分野を含む周辺分野の研究促進と産学の研究者・開発者の交流を目的として2000年7月に発足した.発足後の12年間に18回の単独研究集会を開催し,近年は毎年日本応用数理学会年会でオーガナイズドセッション,研究部会連合発表会で「数論アルゴリズムとその応用」 セッションを開催している.前回の報告(2005年)から既に7年が経過しているが,その間に研究部会連合発表会が組織されたこともあり,ここ数年は独自の研究集会を開催せず,研究部会連合発表会と年会のオーガナイズドセッションを主な交流の場としている.それぞれの研究集会では5件以上の研究発表と概ね50名程度の参加者数があり,数論アルゴリズムとその応用分野の発展に継続的な寄与をしている.さらに,2005年と2009年には国際的な研究集会である「代数学と計算」の後援とセッション企画も行った.
以下に前回の報告以降に開催した研究集会一覧を示す.

  • 第14回研究集会(2005年6月4日,中央大学後楽園キャンパス)【講演件数】8
  • 2005年年会オーガナイズドセッション(2005年9月25日,東北大学青葉山キャンパス))【講演件数】3(招待講演3件)
  • 第6回「代数学と計算」研究集会(2005年11月15日-18日,首都大学東京国際交流会館)【講演件数】35(特別講演6件)
  • 2006年研究部会連合発表会「数論アルゴリズムとその応用」セッション(2006年3月5日,早稲田大学大久保キャンパス)【講演件数】7
  • 第15回研究集会(2006年7月8日,首都大学東京国際交流会館)【講演件数】6(招待講演 1 件)
  • 2006年年会オーガナイズドセッション(2006年9月16日,筑波大学春日キャンパス)【講演件数】3(招待講演3件)
  • 第16回研究集会(2006年12月2日,電気通信大学)【講演件数】7
  • 2007年研究部会連合発表会「数論アルゴリズムとその応用」セッション(2007年3月3日,名古屋大学東山キャンパス)【講演件数】9
  • 第17回研究集会【日時】2007年7月7日,東京理科大学野田キャンパス)【講演件数】5
  • 2007年年会オーガナイズドセッション(2007年9月15日,北海道大学)【講演件数】3(招待講演3件)
  • 2008年研究部会連合発表会「数論アルゴリズムとその応用」セッション(2008年3月8日,首都大学東京)【講演件数】6
  • 第18回研究集会(2007年7月5日,情報セキュリティ大学院大学)【講演件数】8
  • 2008年年会オーガナイズドセッション(2008年9月17日,東京大学柏キャンパス)【講演件数】2(招待講演2件)
  • 第19回研究集会(2008年11月29日,東京理科大学野田キャンパス)【講演件数】5
  • 2009年研究部会連合発表会「数論アルゴリズムとその応用」セッション(2009年3月7日,京都大学)【講演件数】11
  • 2009年年会オーガナイズドセッション(2009年9月30日,大阪大学豊中キャンパス)【講演件数】8
  • 第8回「代数学と計算」研究集会(2009年12月2日-4日,首都大学東京国際交流会館)【講演件数】24(特別講演2件)
  • 2010年研究部会連合発表会「数論アルゴリズムとその応用」セッション(2010年3月9日,筑波大学筑波キャンパス)【講演件数】6
  • 2010年年会オーガナイズドセッション(2010年9月8日,明治大学駿河台キャンパス)【講演件数】4(特別講演1件)
  • 2011年研究部会連合発表会「数論アルゴリズムとその応用」セッション(2011年3月8日,電気通信大学)【講演件数】7
  • 2011年年会オーガナイズドセッション(2011年9月16日,同志社大学今出川キャンパス)【講演件数】4
  • 2012年研究部会連合発表会「数論アルゴリズムとその応用」セッション(2012年3月9日,九州大学伊都キャンパス)【講演件数】11
  • 2012年年会オーガナイズドセッション(2012年8月29日,稚内全日空ホテル)【講演件数】5

本研究部会の特徴の一つに,数論アルゴリズムを中心として幅広い分野をカバーしていることが挙げられる.例えば,2012年の研究部会連合発表会と年会の講演16件の内容内訳は,代数曲線暗号・代数曲面暗号関連4件,多変数暗号・RSA暗号等の暗号関連4件,楕円曲線の性質関連2件,p進体関連1件,有限体関連1件,疑似乱数生成関連1件,数論ソフトウェア関連1件,離散対数問題関連1件,数論アルゴリズムの形式検証関連1件であり,数論から暗号・乱数生成まで多岐にわたっている.また,これまでの講演には,類数計算やRiemann Zeta函数の零点計算のような数論計算や,符号のゼータ関数等の特色ある発表,GPGPUのような最新の話題も含まれる.講演の研究領域が広範にわたるため,研究集会には純粋数学者から企業の製品開発者まで幅広いバックグラウンドの研究者・技術者にご参加頂いている.その結果,異分野からの刺激を受けながらお互い研究について議論することで,通常の研究集会では得難い経験を積むことができる場となっている.
研究集会の開催以外の活動の一つとして,2007年に Japan Journal of Industrial and Applied Mathematics (JJIAM) 誌上で“Algorithmic Number Theory and Its Applications” 特集を企画したことが挙げられる.本企画では,本研究部会の部会長である首都大東京の中村憲先生と数論アルゴリズムの世界的権威であるDartmouth大のCarl Pomerance先生にGuest Co-Editorsをお引き受け頂き,Guest Associate Editorsにも本研究部会の当時の幹事(後藤丈志,木田雅成,長尾孝一,内山成憲)の外に,Daniel J. Bernstein, Qi Cheng, Henri Cohen, Andreas Enge, István Gaál, Florian Hess, Ming-Deh A. Huang, Tanja Lange, François Morain, Siguna Müller, Leo Murata, Tatsuaki Okamoto, Jonathan Pila, Richard Pinch, Michael Rubinstein, Takakazu Satoh, Renate Scheidler, Igor Shparlinski, Andreas Stein, Peter Stevenhagen, Edlyn Teske, Mark Watkins, HughWilliams, Alessandro Zaccagnini (以上敬称略)と世界的権威や第一線で活躍中の若手研究者等,的確な意見を幅広く伺えるに方々にお引き受け頂いた.2006年7月20日に投稿を募集し,2006年10月31日の投稿締切までの約3ヶ月の投稿期間に高品質な論文が多数投稿された.そして厳格な査読プロセスを経て,特に品質が高く数論アルゴリズムとその応用分野のその後の発展への大きな貢献が期待される以下の6編の論文が採録され,2007年10月に24巻3号として出版された.

  • Eric Bach and Nathan C. Ryan, Efficient verification of Tunnell’s criterion
  • Gavin Brown and Kaori Suzuki, Computing certain Fano 3-folds
  • Ryuichi Harasawa, Yutaka Sueyoshi and Aichi Kudo, Tate and Ate pairings for y2 = x5 − αx in characteristic five
  • Takeshi Goto and Katsuyuki Okeya, All harmonic numbers less than 1014
  • Koh-ichi Nagao, Index calculus attack for Jacobian of hyperelliptic curves of small genus using two large primes
  • Takuya Yamauchi, An observation on the cyclicity of the group of the Fp-rational points of Abelian surfaces-rational points of Abelian surfaces

掲載論文は我々の分野の発展に大きな貢献があり,これらに動機付けられた発展研究が行われている.これらはSpringer Linkから(有料)ダウンロード可能なので,興味をもたれた方は是非ともご参照頂きたい.
本研究部会の詳細についてはJANT公式ホームページをご参照頂きたい.また,本研究部会では研究部会メーリングリストを運営し研究集会等の部会に関連する案内を行っている.
本研究部会に参加を希望される方は是非ご登録頂きたい.



まつお かずと
神奈川大学 理学部 情報科学科
[Article: I1208B]
(Published Date: 2012/12/18)