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学術会合報告

2012年度応用数学合同研究集会に参加して

出原 浩史



2012年12月20日から2012年12月22日にかけて龍谷大学瀬田キャンパスにて開催された応用数学合同研究集会に参加した。この研究集会は日本数学会応用数学分科会が主催、日本応用数理学会と龍谷大学理工学部が協賛となっており、応用数学に関連した研究成果を発表する集会である。応用数学の2本柱である離散系と解析系の2つのセッションがパラレルで行われている比較的大きな研究集会である。私は博士課程後期D1以来、7年ぶりにこの応用数学合同研究集会に参加した。私も歳を取ったものだと当時を懐かしみつつ龍谷大学の構内を散歩しながら解析系の会場へと向かったが、会場が7年前とは異なっており、それを確認せずに間違って一号館の最上階へ行ってしまったことは秘密である。

残念ながら、私の研究分野の関係上解析系のセッションにしか参加していないが、それでも研究発表の内容が非常に多彩であり、活発に議論がなされていたと思う。研究集会の前半は数値解析に関する内容の発表が多く、後半はモデリングや数値シミュレーション解析・理論解析の内容が発表の中心であった。私は改めて、解析系応用数学はモデリング・数値シミュレーション・理論解析から成り立っているのだと考えさせられた。ある現象を理解したいというモチベーションから研究が始まり、そのためには現象を数学の言葉で表現するモデリングが必要となり、次にそのモデリングによって得られた数理モデルを解析するツールとしての理論の構築やモデルの数値シミュレーションを行うための数値解析の発展、これらすべてが応用数学には必要不可欠であると感じた。さらに個人的に興味深かった点として、離散系・解析系合同セッションを挙げたい。講演者は離散系・解析系分野からそれぞれ澤正憲氏と大浦拓哉氏であった。澤氏の講演はHilbert恒等式や立体求積法などについて研究の基礎的なところから話していただき、解析系の私にも分かり易かった。大浦氏は高速フーリエ変換で有名な方で、講演内容はそれに関連する振動積分の数値計算法についてであった。これまで困難であった振動積分の新たな数値計算手法を提唱されていた。

私は研究集会3日目の22日の午前中に“増殖項をもつKeller-Segel方程式の時空間パターン”というタイトルで25分間講演を行う機会を頂いた。この内容は九州大学の栄伸一郎教授と明治大学の三村昌泰教授との共同研究に基づくものであり、増殖項をもつKeller-Segel方程式という単純な方程式であるにもかかわらず、カオス的に振る舞う解が存在するという面白いパターンダイナミクスを見せる方程式である。恐ろしいことに本研究集会に三村先生も来られており、私の研究発表を終始険しい顔で聞いておられる姿が講演中に目に入り身震いした。また個人的にはモデリングにも興味があるので、秋山正和氏の細胞極性の数理モデルの話などは楽しむことができた。もちろん仮定を置いたうえで現象のモデル化を行うので、そもそもその仮定が正しいかどうかという議論の余地はあるが、それでも数理モデルをシミュレーションしてみると現象にある程度合致する結果が得られ、現象解明へのファーストステップとなりうるという点がモデリングの面白いところだと思う。

私は今回久しぶりに応用数学合同研究集会に参加したが、非常に刺激的であり興味深い講演が数多くあり、今後も参加しようと思った。また応用数学の分野で活動している一人として社会に貢献する研究をしていきたいと強く感じた集会であった。



いずはら ひろふみ
明治大学 先端数理科学インスティテュート
[Article: G1301A]
(Published Date: 2013/06/25)