JSIAM Online Magazine

学術会合報告

第46回数値解析シンポジウム 参加報告

高安 亮紀



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2017年6月28日(水)から30日(金)にかけて、第46回数値解析シンポジウム(NAS2017)が滋賀県高島市グリーンパーク想い出の森にて開催されました。本稿では、本シンポジウムの参加報告をします。公式ホームページにあるように「このシンポジウムは,数値解析に関係する研究者が集い,合宿形式で討論を重ねる研究会」であり、昭和47年に日光で開催された「第1回数値解析研究会」からはじまり(昭和59年に現行の「数値解析シンポジウム」と表記)46年間続く、歴史ある研究会です。研究会の初期から参加されている先生方が数値解析シンポジウムでは快活に最新成果を講演されており、若い研究者にとっては、普段教科書や論文等で目にする先生方の講演を直に聴講でき、さらに懇親会で交流させていただけるという貴重な機会でもあります。筆者も僭越ながら学部4年生の頃から参加させていただき、初めての学会発表はこの数値解析シンポジウムでした。

今回の会場は、京都駅からJR湖西線の新快速にゆられて42分の安曇川(あどがわ)駅から、シャトルバスでさらに約30分の山奥。周りは森に囲まれ、テニスコート、ラグビー場、バーベキュー場、アスレチック施設などがならんでおり、夏の合宿所といった雰囲気でしたが、数値解析シンポジウム名物の温泉があり、セッション後の温泉と懇親会が議論を加速させました。参加者は全部で54名、講演は羽田野直道先生(東大生産技術研究所)による招待講演、一般公演およびポスター発表を合わせて36件でした。数値解析シンポジウムの特徴である完全1セッション制は変わらず、参加された全員に講演を聴いてもらえることができます。今年は2017年2月にご逝去なされた森正武先生を偲ぶ特別セッションが設けられ、森先生と数値解析シンポジウムの深い関わりを再度実感することとなりました。本セッションの詳細は降籏大介先生が別記事にされていますので、そちらをご覧ください。

さて独断と偏見ですが、今回の数値解析シンポジウムにおける講演で筆者が興味深かった講演を2つ挙げます。一つ目は名古屋大学の中野航輔さん、宮武勇登先生、曽我部知広先生、張紹良先生による「Dirichlet 境界条件下の偏微分方程式に対する splitting 解法の収束性劣化の改善案」です。この講演ではStrang splittingという時間発展偏微分方程式の数値解法に対して、時間変数の離散化に関する誤差の収束性の劣化を改善するEinkemmer-Ostermannによる結果の拡張を紹介していました。提案された改善案はとても素直な技巧で、先行研究の綺麗な拡張という印象を受けました。さらに筆者はsplitting解法と非線形半群理論との関連について妄想が進み、著者の一人である宮武先生に懇親会で質問をしていました。セッション中だけでなく、懇親会でフランクに質問できる点も合宿形式である数値解析シンポジウムの特徴と言えます。

二つ目は理化学研究所の大井祥栄先生による「Parareal手法を用いた時間並列計算の性能評価」です。大規模並列計算は今日の科学技術計算で常識となっていますが、時間発展問題(逐次的な数値計算)の並列化が一般に困難です。しかし、近年、時間並列計算の手法が開発され「Parareal in Time Integration Method」として発展しているそうです。この手法はマルチグリッド法で得た予測値を基に、ある反復計算により各グリッドの初期値を更新することで近似解の精度を向上させるというもので、一種の予測子-修正子法のようです。これをHPCの観点から議論するというのが本講演の趣旨で有効性の実証にはまだ課題があるようですが、このような計算手法は時代に即したものであり、計算技術の発展が生み出した数値手法と言えます。数値解析の現代の様相を垣間見たような気がしました。

次回、第47回数値解析シンポジウムは福井大学の細田陽介先生が実行委員長としてご準備くださることとなりました。数値解析シンポジウムでは学生の発表も多く、横のつながりを学生時代から意識できる貴重な機会となっています。筆者も同年代の研究者の多くは過去の数値解析シンポジウムで同じ部屋だったなどの理由で知り合い、現在も交流が続いています。学生さん達のさらなる参加を是非、期待したいと思います。それでは北陸のお魚と温泉を楽しみにしつつ、この辺りで擱筆させていただきます。今後の数値解析シンポジウムの益々の発展を心からお祈り申し上げます。



たかやす あきとし
筑波大学
[Article: G1707A]
(Published Date: 2017/09/11)