JSIAM Online Magazine


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研究部会だより

機械学習研究部会の紹介

烏山 昌幸



機械学習(Machine Learning)とは蓄積されたデータから背後に潜む法則性を発見するための枠組みであり,近年のAI関連技術の中心となる考え方である.機械学習の技術は非常に汎用性が高く,様々な分野の情報を統一的な枠組みで扱うことができる.画像や音声,バイオ,神経科学,医療などでの応用は古くから行われてきたが,ビッグデータという言葉が一般にも広く知られるようになった今,人々の生活にも深く関わる多様な応用領域が生まれはじめている.

学習するコンピュータに期待と関心が高まる一方で,どのようなことが今できるのか,あるいはできないのかといった技術的な側面について理解が十分に広がっているかといえば,必ずしもそうとは言えないのが現状である.また,実際にデータを保有するデータドメインの研究者と機械学習の研究者との交流が非常に限定的であったこともこのような事態を起こした原因の一つであった.我々は近年の機械学習の動向について,多様なバックグラウンドの研究者が集まる応用数理学会において,分野横断的に議論できる場を提供するよう活動している.また,機械学習研究部会は2016年度より幹事団が交代し,主査として名古屋工業大学の烏山昌幸が,幹事団として大阪大学の河原吉伸,東京大学の佐藤一誠,岐阜大学の志賀元紀が就任している.

2016年9月に福岡で開催された本学会年会では,オーガナイズドセッションとして新幹事団らが近年の機械学習研究の紹介を行った.烏山は「多様体学習に基づく特徴クラスタリング」と題して多様体の類似性に基づいた変数クラスタリングについて講演を行った.河原は「非線形動的システムのスペクトル学習」と題して非線形動的システムに対するカーネル法によるアプローチを紹介した.佐藤は「オンライン転移学習と医用画像読影支援への応用」と題して転移学習の理論解析と医用画像診断における応用事例について講演を行った.志賀は「走査型電子顕微鏡データ解析のための非負値行列分解」と題して行列分解による走査型顕微鏡データのスペクトル解析に関する講演を行った.会場は満席となり,近年の機械学習研究の話題提供とともに,新幹事団体制の立ち上げのアナウンスとなった.

2017年9月に東京で開催された本学会年会では,機械学習の科学応用を中心に四名の研究者の方々を招いた.北海道大学の瀧川氏には「グラフデータの機械学習における特徴表現の設計と学習」として化合物のようなデータをグラフとして表現する機械学習についてご講演をいただいた.産総研の瀬々氏には「高次の組合せの効果を見出すための多重検定補正法と生命科学データ解析への応用 」として組み合わせ効果の検定にまつわる困難を回避する近年の手法についてご講演をいただいた.理研の山田氏には「科学的発見のための高次元非線形統計モデリング」として非線形の変数選択の新しい枠組みについてご講演をいただいた.東京大学の本多氏には「相対比較に基づくランキング推定アルゴリズムについて」として,相対的な関係性情報からのランキング推定手法に関するご講演をいただいた.全体を通して,異分野の研究者の方からも活発な質疑が行われ,有意義な情報交換の場とすることができた.

機械学習の実社会での応用が本格化するなか,本研究部会では引き続き応用数理分野の研究者への情報提供や連携を通して,分野横断的な新たな価値の創出へとつながる活動を目指していく.本研究部会の活動に興味を持って下さっている学会員各位には引き続きのご支援をお願いするとともに,本部会の活動を通して一人でも多くの方に新たに機械学習に関心を持って頂けたら幸いである.



からすやま まさゆき
名古屋工業大学
[Article: I1712A]
(Published Date: 2018/01/26)