JSIAM Online Magazine


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学術会合報告

RIMS共同研究(公開型):数値解析学の最前線ー理論・方法・応用ー参加報告

小林 由佳



2017年11月8日から11月10日の3日間、京都大学数理解析研究所にてRIMS共同研究(公開型):数値解析学の最前線ー理論・方法・応用ーが開催されました。京都大学数理解析研究所での数値解析に関わる研究集会は、数値解析学の理論・方法・応用に携わる研究者によって、数値シミュレーションにおける数学の果たす役割、課題、今後の展望などの価値観を共有することを目的として1969年より毎年開催されており、今年で49回目となる大変歴史のある研究集会です。こちらの歴史については、研究集会のwebページ(http://ri2t.kyushu-u.ac.jp/~watanabe/WorkShop/RIMS2017/)に九州大学の渡部先生がまとめてくださっています。私が初めて参加したのは2年前、ショートコミュニケーションズという院生からポスドクを対象としたセッションでの研究発表でした。2度目の参加となる今年は全て招待講演ということで、プレッシャーもありましたが、今回このような場で講演する貴重な機会を頂けたことを大変嬉しく思っております。

本年のRIMS研究集会では27件の招待講演と、東京大学の相島健助先生、同じく東京大学の齊藤宣一先生による2件の特別招待講演が行われました。講演はシングルトラックで行われ、全ての講演を一つの部屋で聞くことができるというのがこの研究集会の大変良いところだと思います。講演の依頼の際にいただいたメールでは、「講演内容は, 前回お送りした研究協力者の方からの紹介内容に限らず、今までの研究総括や最新の結果の報告、あるいは、共同研究の「触媒」となることが期待される内容や、アイデアや研究の方向性は正しいと確信するものの現時点では様々な困難から未完成のため通常の研究集会では発表を躊躇するような問題提起も歓迎いたします」と書かれており、まさにそのような普段はなかなか聞くことができないような貴重な講演が多くあり、どの講演も大変面白く興味深いものでした。特に印象に残ったのは、東大の齊藤先生の特別講演での最後のスライドに書かれていた「数学的に同値であっても、定式化や表現は、決定的に重要である。(微妙な差異に気を配ることは、研究の質を向上させる)」という一言でした。この言葉を聞いたとき、何事も大雑把にしがちな私は身が引き締まるような思いでした。他にも、普段は数値解析分野以外でもご活躍されている方々も参加されており、数値解析学の最前線というタイトルではあるものの分野も内容も様々で、数値解析の奥深さを改めて実感しました。また、海外の方も多く参加され、最終日の最後に行われたセッションは全て英語での講演となっていました。

 

会場となった数理解析研究所は、京都大学農学部の横、京都市バスの京大農学部前と北白川停留所との間にあります。京都の市バスは非常に複雑で、2度目の参加にも関わらず今回もバスの乗り継ぎには苦労しました。タクシーで会場の名前を言ってもわからなかったという話もあり、たどり着くまでの難易度は少し高かったように思います。11月の京都といえば紅葉で有名ですが、上旬ではさすがに紅葉にはまだ早い印象でした。数理解析研究所の前は銀杏が黄色く色づいていましたが、初日に雨が降ったのもあり、あまり綺麗に見ることができなかったのは少し残念です。

京都大学数理解析研究所の前

京都大学 数理解析研究所の前

今回の研究集会ではオフィシャルな懇親会は行われず、懇親したい方は各々懇親してくださいとのことで、夜には芝浦工業大学の尾崎先生、筑波大学の高安先生、産総研の南畑先生、早稲田大学の田中先生らに誘っていただきました。近況や研究に関する話題、海外の話等々でたいへん盛り上がり、楽しい時間を過ごすことができました。

今回参加して、分野も年代も様々な多くの方々に講演を聞いていただき、緊張もしましたが貴重なご意見や助言、ご指摘を頂くことができて大変充実した3日間となりました。あっという間でしたが、どの講演もたいへん面白く、また勉強になることもたくさんあり、良い経験となりました。最後に、発表の機会を与えて下さった某先生、また、会期中お世話になった多くの方々に感謝いたします。

 



こばやし ゆか
東京女子大学
[Article: G1710A]
(Published Date: 2018/01/26)