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学術会合報告

2017年度応用数学合同研究集会 参加報告

小林 俊介



明治大学大学院D1の小林俊介と申します.本稿では,2017年12月14日から12月16日の3日間にかけて龍谷大学瀬田キャンパスで催されました,応用数学合同研究集会の参加報告をいたします.

私が初めて参加したのは昨年度のことです.まさかこれほど多くの先生方がお集まりになるとは知らず,気持ちのゆとりがないまま講演をした記憶があります.研究者間では,冗談めかして「年末の忘年会」として知られているとよく耳にしますが,これほど大規模な忘年会を私は経験したことがありませんでした.今では,毎年参加することが自身の研究のペースメーカーとなっています.

ある先生のご講演にもありましたが,本研究集会の小史を文献(http://mmc01.es.hokudai.ac.jp/CAM/2013/submit20111015.pdf)に沿って以下に紹介します.応用数学合同研究集会は,1980年代前半に故山口昌哉京大教授(当時)が中心になって旗上げをしたものであり,当初は京都大学で毎年開催されていました.その後は会場を龍谷大学に移し,例年離散系と解析系のふたつのセッションが行われています.並行して開催される両セッションの交流をはかるべく,近年までは全参加者が集う約90分の合同セッションも開催されていました.最近では応用数学研究奨励賞が設置されたことも相まって,若手研究者の講演が多くを占めるようになり,本研究集会の価値はまた一段と高まっています.

さて,本年度は離散系で42件,解析系で53件(講演希望件数は68件),合わせて約100件近くもの講演が行われ,大盛況に終わりました.応用数学の研究対象のヴァリエーションの豊かさ,研究競争の激化を改めて認識させられた研究集会でした.講演数増加の影響でしょうか,残念ながら本年度は離散・解析合同セッションの開催は見送られることになりました.しかし,懇親会では両分野に属する研究者が一堂に会し,互いに議論しあい,それぞれの知見から語り合うことで,大変有意義な時間を過ごせたように思います.日本の応用数学を牽引する先生方と,異なるバックグラウンド・発想を元に,互いに肩を並べて議論できることは,まさに本研究集会の特色です.実際,講演後に研究内容に関わる様々なご助言や文献を先生方からいただくことができ,研究のブラッシュアップに繋がりました.ご教授いただいた一つ一つのことが,今後の財産になるような気がしてなりません.

以下では,私が主に参加していた解析系セッションについて述べます.研究対象が多岐に亘っているため全てを列挙することはできませんが,大まかには,「反応拡散系によるモデリングと数学解析」,「爆発解の精度保証つき数値計算援用解析」,「パーシステントホモロジーを利用した位相的データ解析」,「流体問題に対する数値・数学解析」,「医学・生物分野に現れる諸現象に対する数値シミュレーション」,またそれらに関連した「数値解法の提案と解析」などが話題の中心に挙がっていました.昨年度から継続している研究の成果報告であったり,発展途上ではあるが新規性のある研究の中間報告的な発表もあり,様々な立場の専門家が直面している現状の生々しさを感じることができました.私個人としては,特に医学系に関連する講演を通して,現場と理論との緊迫した関係性を感じました.数学者が参入できる部分はないのか,数学的に解決できる課題はないか,など思考を巡らせながら,今後ブレイクスルーが起こるのではないかと,手に汗握りながら講演に聞き入っていました.新時代の潮流を創りだすような研究が,本研究集会から生まれる予感がしてなりません.

最後になりますが,お忙しい中我々の為にご尽力下さった世話人の皆様に心より御礼申し上げます.また,本研究集会を影で支えて下さった龍谷大学の皆様に深く感謝申し上げます.特に学生の中には,自身の講演に加えて会場設営や当日の雑務,懇親会の設置など,様々な部分で気を張ることが多く,息つく間もなかった方もいたかと思います.今後も本研究集会が,応用数学と諸科学分野とを繋ぐ重要な架け橋となり,益々発展することを祈って本稿を終えたいと思います.



こばやし しゅんすけ
明治大学
[Article: G1712B]
(Published Date: 2018/03/09)