降籏 大介
研究集会「常微分方程式の数値解法とその周辺 2018」(略称 ODE-JP 2018)は 2018年7月9日(月)から11日(水)まで、大阪大学豊中キャンパスのサイバーメディアセンターにて開催されました.
プログラム等の詳細が
https://sites.google.com/view/odejp2018/
にて閲覧できますのでみなさまぜひご参照ください.
さて、そもそも本研究集会は 1987年に京都大学数理解析研究所・短期共同研究にて開催された研究集会に端を発し、その後連綿と開催されてきた歴史ある研究集会で、この回で開催は第15回となります.その名の通り、常微分方程式に関する数値解法をはじめ、広く関連する研究についての発表を募集し開催したものです.
そして、当 3日間のプログラムで参加者は25名、講演件数は23件でした.
一件あたりの講演時間は 35分と少し長めで、そのため初日と2日目の終了時刻は 18時少し前、2日目と3日目の開始時刻は朝9時とやや長時間にわたる研究集会となりました.その講演内容は、常微分方程式、偏微分方程式のみならず超関数、確率分布、制御論、最適化、パターン分岐、モデリングやデータ同化における数値解析やそれらに関する手法、ツールについてなど多岐にわたるものであり、そのバラエティの広さと内容の新しさに、聴講するにたいへん有益なものと強く感じた次第であります.
たとえば、もっとも多くの参加者が集まる時間帯である 2日目夕方セッションは、優秀な若手研究者の一人である名古屋大学の剱持智哉先生による講演「滑らかな領域における放物型方程式に対する有限要素法の誤差評価」で始まりました.関数解析を用いた丁寧なその成果発表に、大変将来が楽しみであると感じられました.
そして引き続いて、ただいまもっともエネルギッシュに活躍されている研究者の一人である北海道大学の長山雅晴先生の講演「自己駆動系数理モデルに対する数値分岐計算」が行われました.自己駆動系の数理モデルは長山先生が作られた優れたモデルで、本講演のように今なお多くの新しい発見がなされ、多くの研究者の興味をひく対象となっています.
そして、本研究集会のこれまでの長年の歴史を研究、運営の両方の側面から支えてこられたお一人である名古屋大学の三井斌友先生による講演「偏角の原理と数値解析」が行われました.数値解析分野では複素関数論の性質を活かした優れた手法がいくつか存在しますが、この講演はまさにそれらの本質に迫ろうというもので大変参考になるものでした.
このように研究、講演内容としても大変有意義だったことに加え2日目の夜に近隣にて開催された懇親会にも多くの方のご参加があるなど、研究者同士の交流の機会としても大いに活用していただきました.
そして会の最後に、これからも定期的に本研究集会を開催していく旨の挨拶と、さらに次回のアナウンスとして、 2019年 9月22,23日(予定)第16回として当研究集会を同志社大学(京都市)にて開催する運びとなり、ドイツ、チュービンゲン大学のChristian Lubich教授を参加者に迎えるなど、関係者の皆様で準備を進めておられるとの内容の挨拶があり閉会となりました.この 2019年の ODE-JP もまた大変楽しみな研究集会であると言えましょう.
ふりはた だいすけ
大阪大学
[Article: G1807C]
(Published Date: 2019/03/04)