JSIAM Online Magazine

学術会合報告

2019年度 応用数学合同研究集会 参加報告

岡本 守



本稿では,2019年12月12日から12月14日の3日間にかけて龍谷大学瀬田キャンパスで開催された応用数学合同研究集会の参加報告をいたします.

最初に応用数学合同研究集会の簡単な来歴について触れたいと思います.応用数学合同研究集会は長い歴史を持つ研究集会で,今でも毎年会場にいらっしゃる一松信先生が2005年の応用数理に寄稿なされた「応用数学合同研究集会」によれば,山口昌哉先生によって昭和の終わり頃に旗揚げされて以降,平成を跨ぎ,今回令和元年に到るまで30年以上の歴史を持つようです.主催については,当初は応用数学関連で科研費を受けた先生方からなる有志連合の形で企画されていたようです.日本数学会応用数学分科会にある文献によれば,2011年度には正式に日本数学会応用数学分科会が主催することになり,さらに翌年からは,正式に日本応用数理学会と龍谷大学理工学部が協賛することになったようです.開催場所については,私が遡れる限りでは2008年度以降は龍谷大学瀬田キャンパスで開催されているようですが,先述の「応用数学合同研究集会」によればそれよりも前から龍谷大学瀬田キャンパスで開催されていたようで,長年に渡る会場の提供には感謝の念が尽きません.

次に私と応用数学合同研究集会の関わりについてですが,私が初めて参加したのは2015年度のことで,当時は私の研究室の教授に怖い先生方がたくさん来られるのだと脅かされていた記憶があります.しかしそれ以上に,発表後の質疑応答で貴重な意見や提案をいただけたことが強く印象に残っています.私の例に限らず,今でも若手の研究者や学生にとっては貴重な研究発表の場であると共に,普段は繋がりのない研究者から意見を得られる場として,重要な研究集会なのではないかと思います.

今年度の応用数学合同研究集会全体についてですが,離散系で34件,解析系で52件の計86件の講演が行われました.飯田渓太先生がJOMに寄稿された「2018年度応用数学合同研究集会に参加して」にある過去の講演数と比較すると,離散系は少し落ち着いたようですが,解析系は過去最大級の講演数であることが分かります.例年多くの講演申し込みがあるため,泣く泣く講演を断る例もあると聞いています.講演件数の多さや,近年では離散・解析合同セッションの開催が見送られていることもあって,二つの系はほとんど独立して開催されているような印象を受けますが,一方では両分野に跨るような講演内容も増えているようです.例年2日目に行われる懇親会は研究者同士,研究者を志す学生同士,あるいはそのような学生と現役の研究者との交流の場のみならず,離散・解析の両分野に跨るような研究者たちにとっても,良い交流の機会になったのではないかと思います.

以下に,私が参加した解析系セッションについて感想を述べさせて頂きたいと思います.研究内容は非常に多岐に渡っており,純粋数学に近い立場からの解析から,現象に近しい立場でのモデリングまで,応用数学の総合市とでも言えるような様相であったかと思います.例年にも見られたような反応拡散系を用いたモデリングとその数学解析や,爆発問題へのアプローチ,医療や薬学への数理の応用などを取り扱った講演は今年も変わらず多くの講演が行われました.その中で今年の特色を一つあげるならば,社会的な盛り上がりを反映してか,人工知能への応用に関わる講演が目立ったように思われます.特に,深層学習に用いられるニューラルネットの分類は,深層学習の理論的解析に大きな役割を果たすのではないかと期待しています.また,スケールフリーネットワークの連続極限において反応拡散方程式を考えるという試みは,SNSが隆盛を極める現代において社会を数理的に理解するための先駆的な結果になるのではないかと思います.手老篤史先生による講演は私にとっては衝撃的な内容でしたが,事実関係の確認が急がれるべき案件であると思います.

最後になりますが,お忙しい中研究集会の開催に尽力していただいた世話人の皆様に心より御礼申し上げます.また,秘書さんや学生さんなど,本研究集会を影で支えて下さった龍谷大学の皆様に深く感謝申し上げます.今後の応用数学の発展を祈念いたしまして,この稿を終わりたいと思います.



おかもと まもる
北海道大学
[Article: G1912C]
(Published Date: 2020/02/03)