JSIAM Online Magazine

学術会合報告

CRM CAMP in Nonlinear Analysis参加報告

浅井 大晴



2020年6月23日から開催されている「CRM CAMP in Nonlinear Analysis」の参加報告を致します。
本学会は、Zoomにて毎週火曜日のモントリオール時間午前10時、日本時間では23時から始まります。一度参加登録をすれば、毎週月曜日にZoomのリンクが送られてきます。そして、事前に決められている1人の講演者が1時間程度発表するという仕組みになっています。

CRM CAMPプロジェクトの主な目的は、計算機援用証明の分野、特に力学系理論と非線形解析の分野での研究者の世界的なコミュニティを結集することです。このコミュニティは過去30年間で劇的な成長を遂げており、数学における多くの重要な未解決問題を解決する方法を開発してきました。しかしながら、この分野の研究者は世界中に散らばっています。例えば、本学会のホストであるScientific coordinatorsらはカナダ、アメリカ、オランダに所属があり、区間演算ライブラリINTLABの開発で有名なRump氏らはドイツ、そして私達は日本といった風に。近年、そのような世界中の研究者がより成長するためには研究結果の議論とその知識のシェアのために定期的なフォーラムの必要性が高まっていますが、皆さんもご存じの通り今年は新型コロナによる海外への渡航に制限が設けられる状況になりました。本学会はそのような時期にこそ世界中の研究者が議論できる場を定期的に設けることが重要であるという趣旨で開かれています。
ホームページ上の参加者リストには、約200名の参加者が表示されており、実際その国籍は様々です。また、一部の参加者は自身のホームページのリンクを張り付けており、コンタクトをとることなどもできます。

さて、CRM CAMPのなかで私が印象に残った講演を2つ紹介します。
まずは、Michael Plum氏の講演です。実は、私は学部4年の時に彼の論文を輪読することから研究をスタートさせていたので、本人がライブで登場し発表するということを非常に楽しみにしていました。講演では私も読んだ論文の内容に加え、非有界領域上での内容等も実例と共に紹介されていました。非有界のL型領域のエムデン方程式にも彼の手法が適用できることが分かり、対称性破壊の起きるエノン方程式に適用したときにどのような検証結果になるのかなど数値実験してみたいという気持ちにさせられ、研究のインスピレーションを受けました。詳しく記述されている本も紹介され、早速拝読してみると偏微分方程式に関する精度保証付き数値計算方法の最新の結果をすべて盛り込んでいるといった印象を受けました。
二つ目は、Daniel Wilczak氏による講演です。本講演は彼らが開発し今年2020年に発表した無限次元カオスに対する幾何学的方法をKuramoto-Sivashinsky PDEの周期軌道の安定性とカオス状態に適用した数値結果を発表したものです。この講演からはポアンカレ写像に関する解析手段が一歩進んだという印象を受けました。また、この回はZoomのチャット欄で活発に議論が交わされた回でした。発表中の「entropy」がどの意味でのエントロピーであるかといった具体的な発表内容に関する議論に始まり、本講演の対象問題の元がどこにあるのかといった歴史的な側面について論文を挙げながら議論したり、ある手法について「確か○○さんも研究していたと思うのですが…」という疑問に対して該当者が論文を3本程度紹介するなど盛りだくさんの光景を見ることができました。Zoomだと発表中に質問や意見をするのは間合いなどが難しく、対面での学会よりも発言しにくいように思われますが、チャットならば発表の流れを切らずに発言でき、また自分の意見の根拠となる論文を即座にシェアできるので好感を持ちました。結果、オンライン上での議論についてはメリットデメリットはあるものの、最初に述べたように議論ができる場があるということが最新の結果をシェアし次の結果に結びつける上で非常に大事であると感じさせられました。

本学会は今後も続きます。私自身は、研究対象であるエノン方程式について昨年2019年に興味深い論文を投稿していたイタリアのArioli氏の11月の発表に注目しています。中には参加したいが日本時間で夜の23時開始は厳しいという方がいるかもしれません。その場合は、Zoomの録画がYouTube動画としてアップロードされているので後で視聴することも可能です。また、参加登録前に動画を視聴し雰囲気を味わってみるのもよいでしょう。

最後になりますが、このご時世に、このような場を提供してくださる運営スタッフの皆様には深く感謝いたします。本学会により当該分野の世界的な結びつきと学問の発展を祈り、書き終えたいと思います。



あさい たいせい
早稲田大学
[Article: G2009A]
(Published Date: 2020/12/07)