JSIAM Online Magazine


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学術会合報告

日本応用数理学会若手の会 第7回学生研究発表会 参加報告

安田 和弘



日本応用数理学会若手の会研究部会主催の第7回学生研究発表会が2022年3月10日に開催されました.私自身も運営担当の一人という立場であるため,その視点も交えながら参加報告を書かせていただきます.

若手の会主催の学生研究発表会は,2016年3月に第1回が神戸大学で開催されて以降,研究部会連合発表会の前後に開催されています.コロナ禍以前は主にポスター発表形式で開催されていました.2020年3月の第5回はコロナ禍となり,やむなく中止となりました.翌年の第6回はオンライン開催で口頭発表形式となり,それに引き続き今回もオンラインでの口頭発表形式で開催されました.

今回の第7回学生研究発表会では,1件の特別講演と17件の一般講演がありました.特別講演は,若手で活躍されている東京大学・RIKEN AIPの包含氏にご講演いただきました.一般講演の内訳は,学部生による講演が7件,修士課程学生による講演が8件,博士課程学生による講演が2件となっています.各講演のタイトルや概要は,若手の会HP(http://wakate.jsiam.org/)をご覧ください.運営側としては大変有難く,一般講演が17件という多数の申し込みをいただきました.また,発表会への参加者数は合計72名で,そのうち若手の会の運営委員が13名,講演者が18名であることを考えると,多くの方にご参加いただけたことが分かります.対面で交流できない寂しさはあるものの,ここにはオンライン開催でどこからでも簡単に参加いただけたことも関係したように思われます.

発表会は,オープニングで若手の会研究部会主査の友枝明保先生(関西大学)から,積極的に質問し,異分野との交流やアイデアなどの共有ができればといった趣旨の挨拶をいただきました.その後,午前のセッションが2つ,計7件の発表がありました.内容は発表順に,保険数理における数値計算,分布の歪みを考慮したオプションの価格付け,株の最適売却戦略,2段階分布的ロバストCournot-Nash均衡問題,ODEや数値解析から捉える深層学習,ニューラルネットワークの学習の安定性,深層学習を用いたトピック解析に関する発表でした.

午後の最初は包氏による特別講演で,「学習基準と評価基準の差を探る」というタイトルでご講演いただきました.講演内容は,3つのパートに分かれており,最初の2つがbackwardなアプローチで,評価基準が与えられたときにどのような学習基準を用いることが適切かを考える問題に関するものでした.最後の1つはforwardなアプローチで,学習基準が与えられたときにどのような問題を解くのに相応しいかを考える問題に関するものでした.Backwardなアプローチに関しては,分類器の統計的性質に基づく評価基準と幾何的性質に基づく評価基準についての結果を紹介していただきました.また,forwardなアプローチに関しては,類似度学習と分類問題の関係性に関する結果を与えていました.私の専門である数理ファイナンスとは分野は異なりますが,数理的類似性も感じられ大変楽しく拝聴させていただきました.

その後,午後のセッションが3つ,計10件の発表がありました.内容は,パーシステントホモロジーと医学への応用,流体力学とトポロジカルデータ同化理論,毛細管の界面現象の数理,歩行者モデルの数理,交通流の分岐解析,最速降下線問題,時間非整数階移流方程式の数値計算の安定性,Einstein方程式の数値計算法,周期解の精度保証付き数値計算,Chebyshev補間を用いた関数近似に関する発表でした.最後に,山中脩也先生(明星大学)からクロージングの挨拶がありました.

私の理解が及ぶ範囲で各講演のキーワードなどを書かせていただきましたが,数理的な技術や応用先が非常に多岐にわたることが分かります.年会や研究部会連合発表会では,専門の近い研究者が集まって知識の共有をするのに対して,本発表会は「お隣さん」がどんなことをしているのか垣間見ることができる,横の広がりをもつことができる場でありました.また,各講演に対して学生からも質問や意見交換が行われており,活発で各々楽しめた会であったように思われます.講演内容も全体的にレベルが高く,発表もよくまとめられておりました.これには各発表者の頑張りとともに,指導教員の先生方のご指導によるところも多分にあるように思われます.運営担当の一人としてこの場をお借りして,お礼申し上げます.

最後に,本発表会の準備,運営を中心となり取り仕切っていただきました高安亮紀先生(筑波大学),特別講演の手配等をしていただきました宮武勇登先生(大阪大学)の両運営担当の先生,また会の運営をサポートしていただきました若手の会の先生方にも感謝の意を表させていただき,参加報告を終えさせていただきます.



やすだ かずひろ
法政大学
[Article: G2202A]
(Published Date: 2022/06/17)