大塚 厚二
1.研究部会の紹介
固体や流体などの現象を巨視的にとらえて数理モデル化しようとするとき、連続体力学の考え方が必要になります。研究部会は、連続体での数理モデルを基礎から研究しようとする研究グループです。同様の活動グループとして、例えばSIAM (Society for Industrial and Applied Mathematics)には研究グループ Mathematical Aspects of Materials Scienceがあり、フランス・ドイツ・イタリア・ロシアなど世界中に連続体の研究者が多数います。
本研究部会の運営体制は以下のようになっています。
主査:大塚 厚二(広島国際学院大学)
幹事:伊藤 弘道(東京理科大学)、木村 正人(金沢大学)、
高石 武史(武蔵野大学)、高田 章(旭硝子)、西村 直志(京都大学)、
野津 裕史(金沢大学)、平野 史朗(立命館大学)
ホームページ:comfos.org (http://www.comfos.org)
2.研究部会の歴史
1990年初め、M.E.Gurtin(当時カーネギーメロン大学)に学んだ矢富盟祥(金沢大学名誉教授)からの「工学の理論研究者と数学者とが交流できる研究グループが日本にも必要ではないか」という意見に、三好哲彦(山口大学名誉教授)と大塚が賛同して本研究部会の前身が発足しました。京都大学数理解析研究所での研究会を経て、最初の研究集会「数理から見た破壊クライテリオンに関するセミナー 」(CoMFoS1)を開催したのは、阪神淡路大震災1995年1月17日の直後(1月27日〜29日)でした。CoMFoSは、「特異性を持つ連続体力学」(Continuum Mechanics Focusing on Singularities)の略で、2004年に破壊力学の理論研究者を中心とした研究部会を創設したときに付けた英語名です。研究対象を広げるため、2010年度に名称を「連続体力学の数理Mathematical Aspects of Continuum Mechanics (MACM)」に変更しましたが、継続性を考えて研究部会のドメイン名comfos.orgと研究集会名CoMFoSは変更していません。最近では国際会議として海外からの研究者が多数参加し、CoMFoS17は沖縄科学技術大学、通算18回目となるCoMFoS18(2018年6月13日~15日)は京都で開催し、15と16ではSpringerからProceedings を出版しました。
3.研究部会の必要性
多くの企業が連続体力学を基礎とする計算ツールを使って製品を設計製造しており、不自由を感じていないかも知れません。しかし他国が、従来製品を対等に作る時代には、日本は先端技術に挑戦する必要があります。そのためには、微細構造や相転移を伴う新素材や過酷な環境下などの現象を対象とした、新たな連続体力学の数理を研究する必要があります。またコンピュータの進歩により、近似式による設計製造から、数理モデルに基づく設計に移っていくと予想されます。現象を理解しながら、きわめて高度な数学を扱える研究者が必要となっています。本研究部会が、このような研究者の交流及び育成の場として機能することを期待しています。
4.研究部会の活動状況
次は、メンバーによる現在の代表的な研究です。
【破壊現象】 最近のメンバーとして、木村正人(金沢大)・高石武史(武蔵野大)がフェーズフィールド法による理論及び数値計算、平野史朗(立命館大)・伊藤弘道(東京理科大)が地震関連の研究、さらに、これらのメンバーに加え田中良巳(横浜国立大)・小俣正朗(金沢大)・田上大助(九州大)が研究プロジェクト「連続体における不連続現象の数理モデリングと数学解析」に参加しています。古いメンバーとしては、堀宗朗(東大地震研)が地震のシミュレーション、廣瀬壮一(東工大)が超音波非破壊評価、高田章(旭硝子中央研究所)がガラスのミクロ構造とマクロな材料特性との相関について研究しています。
【数値計算】 数理とシームレスに繋がる数値計算を目指しています。西村直志(京都大)は境界積分方程式法による巨大問題の高速解法を用いた電磁波散乱問題研究を行っています。また、パリ第6大学Hecht教授が中心となる数学的な記述で有限要素解析ができるFreeFem++の日本支部を設置し、利用と講習などを鈴木厚(大阪大)・高石・中澤嵩(大阪大)・大塚が行なっています。CoMFoS18ではリーダーのHecht教授(パリ第6大学)の特別講演がありました。
【最適設計】研究部会「数理設計」と連携を図り、連続体の形状最適化に関する数学理論を畔上秀幸(名古屋大学)・木村・大塚が共同研究しています。
【研究集会】CoMFoSで取り扱われるテーマは、弾塑性論・破壊力学・レオロジー・ナノデバイス・光工学・結晶成長・自由境界問題・逆問題・最適形状設計・粒子法など多岐に渡り、地震関係の発表も増えています。日本応用数理学会の年会および研究部会連合発表会でも毎回2~3セッションを運営しており、活発な議論が行われています。
おおつか こうじ
広島国際学院大学
[Article: I1806A]
(Published Date: 2018/07/24)