JSIAM Online Magazine


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研究部会だより

「行列・固有値問題の解法とその応用」(MEPA) 研究部会の紹介

相島 健助



日本応用数理学会「行列・固有値問題の解法とその応用」研究部会は,以下のような設立趣旨のもと活動を行っています.「横断型学会である日本応用数理学会の特長を生かし,線形方程式,固有値問題,特異値問題などの各種解法やその並列化,計算機実装などの研究者と,これらの方法を利用する幅広い応用分野の研究者が互いに交流することで新しい問題解決手法を見つけることを目的としています」(当研究部会設立趣旨).そして組織体制としては私が主査を務め,今倉暁幹事(筑波大学),大島聡史幹事(九州大学),笠置明彦幹事(富士通研究所),保國惠一幹事(筑波大学),山中卓幹事(武蔵野大学)で幹事団を結成しています.毎年,①7月後半辺りに単独研究集会,②9月の年会のオーガナイズドセッション(OS),③11月後半を目途に単独研究集会,④年末に応用数理セミナー,⑤3月の連合発表会のオーガナイズドセッション(OS),を行っています.当部会のHP(http://na.cs.tsukuba.ac.jp/mepa/)に情報がございますのでご覧いただければ幸いです.JOMにも過去の当部会の研究部会だよりの記事(http://jom.jsiam.org/12347/)がございます.これは当時の主査の曽我部知広先生(名古屋大学)のものですが,そこからさらに昔の片桐孝洋先生(名古屋大学)の記事 [応用数理,Vol.20, No.1, 2010] を見ることもできます.

最近の当部会の活動について述べていきますと,まず応用数理学会が監修するシリーズ応用数理の第6巻として当部会から「数値線形代数の数理とHPC」を共立出版より2018年 8月31日に発売しました(https://www.kyoritsu-pub.co.jp/bookdetail/9784320019553).さらに,応用数理学会論文誌の特集号を2018年9月号から引き続き出版予定です(https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jsiamt/list/-char/ja).この記事をご覧の方は是非上記URLもお目通し頂けますと幸いです.

記憶に新しい11月の単独研究集会と12月の応用数理セミナーについて少し述べます.11月の単独研究集会では線形方程式や固有値問題の数値解法の数理的な講演が多かったですが,薬物動態モデルへの応用についての講演もありました.招待講演では三原朋樹先生(筑波大学)に「p進数を用いた対角化アルゴリズムについて」というタイトルでご発表して頂きました.12月の応用数理セミナーとは「科学技術計算と数値解析」研究部会,「計算の品質」研究部会と連携して行うセミナーです.当部会からは友枝明保先生(武蔵野大学)に依頼し「数理が創り出す錯視作品たち」というタイトルでご講演頂きました.プログラムの詳細は(https://sites.google.com/view/jsiam-seminar-2018/)にあります.

設立趣旨にありますように,当部会は線形代数と数値計算の数理だけでなくその周辺に活動の幅をもっています.例えば夏の単独研究集会は,電子情報通信学会の2研究会および情報処理学会の4研究会とともに毎年開催している合同ワークショップ SWoPP(Summer United Workshops on Parallel, Distributed and Cooperative Processing)の中で開催しています.特にHPC(高性能計算)と相性がよく,当部会のセッションにはスパコンやGPU(Graphics Processing Unit)を用いる研究の発表が多く集まります.HPCとこれほどの連携があるのは当部会の特徴と思います.また年会や連合発表会のOSで多くの講演が集まるのも特徴と言えます.ここ数年の連合発表会では4~5セッションの枠を頂いております.内容的にも魅力的な講演が多く,連合発表会講演賞受賞者が当部会のOSから出ています.2015年に星健夫先生(鳥取大学)「厳密な物理的保存則を持つクリロフ部分空間解法の構築」,2017年に今倉暁幹事(筑波大学)「非線形非負行列因子分解に基づくディープニューラルネットワーク計算法」が受賞しました.

思い返せば私は学生だった2006年頃から当部会でお世話になっていますが,既出の片桐先生の記事によると,当部会の発足が2004年11月26日の第一回研究集会開催時とのことです.つまり私および私に近い年齢で結成してある現幹事団は,発足当時とりこみたいと思われていた世代でしょうし,実際,私のように長期にわたり部会にお世話になっている幹事が多いです.現在,運営の面で安定期に入っていますが,人工知能ブームを受けてまた発足時のような積極性を見せた方がよいのか,考えるべきかもしれません.前回の曽我部先生の研究部会だよりは,これまでほとんど交流の無かった分野の活性化に貢献できればというメッセージで締めくくられています.その当時あまり扱っていなかった研究テーマは,機械学習に関係があるものを中心に当部会にも少しずつ入ってきていると思います.例えばニューラルネットワークやテンソル,或いはレコメンダーシステム等に関する講演が見受けられます.この流れは,数値線形代数の数理の深化と合わせて,今後も継続して活性化していければと思います.

当部会の情報は随時HP(http://na.cs.tsukuba.ac.jp/mepa/)にて公開し,メーリングリストにて有益な情報の案内を行っています.メーリングリストへの登録もHPから可能なのでご覧いただけますと幸いです.



あいしま けんすけ
法政大学情報科学部
[Article: I1812A]
(Published Date: 2019/02/02)