JSIAM Online Magazine


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研究部会だより

「幾何学的形状生成」研究部会の活動状況

梶原 健司



幾何学的形状生成研究部会は2020年4月に設立された新しい研究部会で,幾何学的形状生成に関する最新の研究発表と相互の情報提供の場を提供し,それを通じて応用数理の発展と社会貢献を目指しています.本研究部会では,曲面・曲線の微分幾何,離散微分幾何とその一般化,計算幾何学などを理論的な基盤とし,その上に構造の力学的解析,構造最適化などの手法を開発して幾何学を基盤とする形状生成の理論を構築しています.得られた成果はソフトウェアとして実装し,意匠設計・建築設計・造船などの設計諸分野などへ展開するとともに,その際に得られた問題をフィードバックして理論をさらなる深化を図ります.また,研究部会の会員として,純粋数学,応用数学,情報科学の研究者や設計諸分野の研究者だけでなく,関連分野の企業の研究者を広く受け入れ,数学研究者には応用諸分野との交流の機会を,また応用系・産業界の研究者には最新の数学理論を取り入れる機会を提供し,産学連携を積極的に推進しているところです.研究部会の執行部は,小磯深幸(主査,九州大学マス・フォア・インダストリ研究所),梅原雅顕(幹事,東京工業大学情報理工学院),大崎純(幹事,京都大学大学院工学系研究科建築学専攻),梶原健司(幹事),三浦憲二郎(幹事,静岡大学創造科学技術大学院情報科学専攻),三谷純(幹事,筑波大学システム情報系)の6名で,数学,情報科学,建築学,工業意匠設計という幅広い背景をもつ研究者から構成されています.現在,部会員数は38名です.

本研究部会設立の経緯について少し述べておきたいと思います.主に二つの流れがあり,2016年頃から九州大学マス・フォア・インダストリ研究所の公募制共同利用研究などを利用して,離散微分幾何を介して関係を深めてきた数学や建築学,工業意匠設計の研究者のグループの流れが一つ.また,JSPSの二国間交流事業で日本・オーストリア共同研究「幾何学的視点からの形状生成」(2018〜2019年度)を実施した数学,特に微分幾何学の研究グループの流れが二つ目で,研究部会の名称はこのプロジェクトから取っています.この二つのグループの活動の成果から共通の研究課題が抽出され,JST CREST[数理的情報活用基盤]「設計の新パラダイムを拓く新しい離散的な曲面の幾何学」(2019〜2024年度)(URL: http://ed3ge.imi.kyushu-u.ac.jp)の研究活動が始まりました.本研究部会は,この研究課題採択をきっかけに,幾何学的な手法を用いた形状生成を広く捉え,興味をもつ数学研究者,特に微分幾何学研究者と関連諸分野の研究者の交流の場を提供し,そこから応用数理の一つの新しい潮流を日本で創出したいという意図で設立に至ったものです.

2020年度は本研究部会初めての活動の年となりました.残念なことに,新型コロナウィルス流行の影響で設立記念として計画していたイベントが実施できず,出鼻をくじかれた感は否定できません.そのような中でも今年度は以下のような活動を行ってきました.

・2020年度年会でのオーガナイズドセッションの開催

URL:https://annual2020.jsiam.org/
セッション数5: 16講演+OS企画講演1(パネルディスカッション80分)
オーガナイズドセッションでは企画講演としてパネルディスカッション「産業利用のための特別なクラスの曲線・曲面 -双方向循環型の形状設計プラットフォームに向けて」を実施し,特別なクラスの曲線・曲面の活用法の可能性を概観して,本研究部会の研究課題の一つである「逆方向目的型ソフトウェア」や「双方向循環型の形状設計プラットフォーム」の議論を行いました.

・第17回研究部会連合発表会でのオーガナイズドセッションの開催
URL: http://union2021.jsiam.org/
セッション数4:14講演+OS企画講演1(40分)
企画講演では,形状処理ソフトウェアを開発している企業の方に,開発現場での現在の課題や,そこで必要な数学に関するお話があり,研究の方向性に対する一つの示唆を与えていただくとともに,本研究部会への期待を語っていただき,大いに刺激になりました.

・国際研究集会 第27回大阪市立大学国際学術シンポジウム『可視化の数理と,対称性およびモジュライの深化』の共催

URL: http://www.sci.osaka-cu.ac.jp/~ohnita/2019/OCUsymp2019/index.html
2021年3月21日〜26日にハイブリッド方式で開催された本研究会を共催しました.

2021年度も同様に2021年度年会と第18回研究部会連合発表会でオーガナイズドセッションを実施します.加えて,国際研究集会を主催・共催することを計画しています.また,第18回研究部会連合発表会は本研究部会が世話人部会として,九州大学伊都キャンパスで皆様をお迎えする予定です.それまでには新型コロナウィルスの流行が何とか収まって,皆様をキャンパスにお迎えできることを祈るばかりです.今後,本研究部会は関連する研究部会との連携も含めて,幅を広げつつ活動をしていきたいと思います.どうぞよろしくお願い致します.



かじわら けんじ
九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所
[Article: I2103A]
(Published Date: 2021/06/09)