大林 一平
本稿では私が主査を務める「位相的データ解析」研究部会について紹介させていただきます.本部会はトポロジーの概念を使った様々なデータ解析手法に関する研究部会です.トポロジーを使ったデータ解析法としては例えばグラフを使った手法が古くから良く使われていますが,ここ20年ほどの間にパーシステントホモロジー(PH)やマッパーといった新しい手法が登場し,理論から応用まで世界中で活発な研究活動が行われています.こういった新しいアイデアは位相的データ解析(Topological Data Analysis, TDA)と総称され,分野としての認知も進んでいます.本部会はTDAの日本国内の拠点の一つとなることを目指し,Slackやメーリングリストによる情報交換,年会や研究部会連合発表会でのOSの開催といった活動を行っています.
1. 研究部会発足の経緯
日本応用数理学会に部会を作ろうという話が出てきたのは2020年3月ごろです.日本応用数理学会の研究部会の活動や設立の手続き(井元佑介(京都大学)から手続きに関する詳しい話を頂きました),どういったメンバーで進めるか,といった相談をしました.その後5月くらいに現在の幹事メンバーが固まり具体的な話が進んでいきました.東北大AIMR,京都大KUIAS,CREST,理研AIPなどを研究拠点とした平岡裕章(京都大学)を中心とするTDAや応用トポロジーの研究グループ(エスカラ・エマソン・ガウ(神戸大学),大林,井元)と,流線トポロジー解析に関するプロジェクト(坂上貴之(京都大学),宇田智紀(東北大学))の人々が集まって,現在の幹事団となっています.
研究部会発足の目標として,まずはTDAが最近国内でも活発になってきたのでその拠点が欲しいということがありました.特に応用方面などは割とばらばらに活動しているので,情報交換の場所を作ることで相互の交流を深め,国内のTDA活動を促進したいという思惑です.また,国内におけるTDAのプレゼンスを高め,ICIAM2023を盛り上げよう,というのも目標として挙げられていました.AATRNなど国外ではTDA関連のオープンなコミュニティが活発に活動しており,日本国内にもそういったものが欲しいという話もあったと思います.セミナーの開催などにおける時差の問題を解決するため,日本にも拠点が欲しいということです.これに関しては時差の近いアジア太平洋地域でAPATGという連続セミナーも関係するメンバーで活動をしています.
2. 研究部会の最近の活動
部会のメインの活動は年会や連合発表会でのOSの開催です.2020年9月,2021年3月ではまだ部会が発足していなかったので,正会員OSとして開催しました.2021年9月以降は研究部会OSとして開催しています.毎回2〜3セッション程度の枠で開催しています.TDAの解析手法の基盤となる数学理論,解析手法,そして実際的な応用の話まで,様々なトピックに関する発表が行なわれています.例えば理論方面ではPHの基礎となる箙上の表現論の話,手法については画像処理の話や機械学習とTDAの組み合わせの話,応用では流体や材料科学に関するデータ解析の話,といったように多彩な発表がなされています.参加者や発表者には大学や国立研究所の研究者が多いですが,企業の研究所からの参加者や発表者もいます.スタートの時期が2020年9月なので,今までのところ全てオンライン開催となっています.今後もOSや研究会を開催していく予定ですので,是非ご参加ください.次回は完全に対面でなくても,ハイブリッド開催という形で実施できることを期待します.
3. 部会への入会のお誘い
部会のウェブサイトは <https://sites.google.com/view/jsiam-tda/home> にあり,ここに説明されている通りに幹事のメールアドレスにメールを送ることで部会に参加できます.参加すると部会のSlackやメーリングリストが利用可能になります.多くの皆様のご参加をお待ちしております.
おおばやし いっぺい
岡山大学
[Article: I2202A]
(Published Date: 2022/04/22)