JSIAM Online Magazine


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学術会合報告

行列固有値研究部会 第 18 回研究会

宮田 考史



2014 年 12 月 25 日に「行列・固有値問題の解法とその応用」研究部会の第 18 回研究会を開催した.本研究会は,行列固有値研究部会の活動(年 5 回)の中で単独研究会として位置づけられており,毎年年末に行っている.一方,他の研究会は,SWoPP(並列/分散/協調処理に関するサマーワークショップ)や,応用数理学会年会および研究部会連合発表会の中で行われる.そのため,他の研究会と比較すると,本研究会は比較的小規模であり,アットホームな雰囲気の中で気軽に議論することが可能である.会場は,昨年に続いて東京大学であった.相島健助先生(東京大学)には,会場の確保から研究会当日の細かな運営に至るまでご協力頂き,無事に研究会を開催することができた.

研究会には全部で 10 件の講演があった.具体的には,(制約付きの)最小二乗問題や線形方程式に対する反復法,固有値問題の反復法および準直接法や固有値の下界,さらに,特異値分解などの幅広いトピックが扱われていた.また,量子回路や電子構造解析等の応用問題を扱った発表もあった.これらのトピックにおいて,速度や精度,収束条件の観点から数理的な改善が発表されたが,一方で近年の計算機環境を意識して,アーキテクチャの観点から高速化や性能評価に取り組んだ結果も盛んに発表された.具体的には,並列性・通信量を考慮したアルゴリズムや,異種の計算機資源を有効に利用するためのアルゴリズムが検討された.また,アルゴリズムはその性能を左右するパラメータを含むことが多いが,計算時間を最少化する最適なパラメータの組合せは,計算機環境に応じて異なる.このような課題に対して,実行時間をモデル化した上で最少化することによって,最適に近いパラメータを予測する発表があった.マルチコアの計算機環境は盛んに利用されているが,コア数やその種類・組合せに応じて,様々な計算機環境が考えられる.これらのアーキテクチャの現状や今後の変化は,アルゴリズム開発において重要な一つの側面であるため,数理と高性能計算のバランスを考慮した研究の重要性を改めて認識した.特に,アーキテクチャを意識したアルゴリズムは,その高速性が計算機環境に応じて異なるため,適用範囲・高速性が発揮される条件が明らかになれば,応用分野の研究者にとって更に有用性が高まると思った.

研究会終了後,発表会場で懇親会を行った(東京大学内部のレストラン・日比谷松本楼のケータリング).立食形式で参加者同士が気軽に話すことができたため,発表内容に関する議論の続きを行う参加者が見られた.また,年末の研究会であるため,1 年を振り返りながら近況を報告し合ったり,年明けの学会や学位審査について相談を行ったりと,参加者同士で様々な議論を行う様子が見られた.年末の多忙な時期にも関わらずご参加頂いた皆様に深く感謝するとともに,今後も本研究部会の特色を活かして,多様なトピックを扱った研究会の活動に取り組む予定である.



みやた たかふみ
福岡工業大学 情報工学部 情報工学科
[Article: G1501C]
(Published Date: 2015/05/02)