JSIAM Online Magazine


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研究部会だより

若手の会のこれから

谷口 隆晴



若手の会は東京大学の片桐准教授をはじめとする数名の幹事運営委員によって、研究会やイベントの開催を通し、学生を含む若手研究者の活動を活性化したり若手会員数を増やしたりすることを目的として立ち上げられました。設立して少し経った頃には、若手研究者ならではの柔軟性や親しみやすさから、分野横断的な共同研究や産学連携の機会となることなども期待されるようになりました。昨年までの主な活動は、目覚ましい活躍をした若手研究者や優秀な学生による招待講演を中心とした研究集会です。講演時間も長く確保するようにしておりましたため、分野を越えて、新しい研究について議論・情報交換する場として非常に意義のあるものであったかと思います。実際、過去の講演者の研究分野は数値解析やHPC、量子化学、オペレーションズ・リサーチ、数理ファイナンス、機械学習など、非常に幅広い範囲にわたっています。

一方で、このような活動を続けるうちに5年ほどの時間が経過し、若手の会も「若々しさ」に欠けてきたように思います。実際、「若手」であった初期の運営メンバーの中には「若手の定義」から外れてくるものも出てきました。また、産学連携については「産業における応用数理」研究部会が立ち上がり、必ずしも若手の会が中心となって担う役割ではなくなりつつあります。そこで、若手の会も始まったころのように若返るべく、この一年、今後の活動について大幅な見直しを行ってきました。

これからの若手の会でも活動目的は変わりませんが、単純に「よりアクティブに活動していこう!」ということを考えております。それに向けた第一歩として、2016年3月、研究部会連合発表会の前日に第1回学生研究発表会を開催しました。この発表会は、主に卒業論文を終えたばかりの学部生や、少し良いアイデアを思いついた修士1年生によるポスター発表を中心とした研究集会です。まだ応用数理学会の年会や研究部会連合発表会で発表するような内容にはなっていないけれども、研究を進めるにあたって広い分野の多くの方々から意見をもらいたい、また、近い将来にしっかりした発表ができるようになるために、まずは研究発表に慣れ親しむ場が欲しい、あるいは他の大学の卒論生はどのような研究を行っているのかを知りたい、といった要望は少なからずあるように思います。本研究集会はこのような要望に応えるものです。また、まだ専門分野もはっきりと決まっていないうちに、同世代の様々な分野の学生と交流の機会があるということは、狭い分野にとらわれない広い見識と人脈を得るために有効であると思います。この研究集会に参加することで、分野を越えた共同研究のきっかけを作って頂ければ嬉しいです。

第1回の研究集会では、幹事の不手際からご案内が遅れてしまったにも関わらず、様々な研究部会の皆様からご協力を頂きまして約20件の発表申し込みを頂きました。そのうちおおよそ半数が学部生の発表であり、特に、学部1年生の方からも1名、発表申し込みを頂きました。分野も幅広く、数値解析やHPCの他、離散数学、折り紙工学、統計物理や機械工学など、様々なポスターが並びました。懇親会の席でも、分野ごとに集まってしまうことなく、単純に隣りのポスターの発表者と会話する方が多かったようで、分野を越えた交流という目的も、ある程度、果たせたのではないかと思います。

これからの若手の会では、このようなイベントを年会・研究部会連合発表会の前後に企画していきたいと考えております。今回は修士や学部生が中心のイベントでしたが、博士課程の学生や博士取得して間もない研究者の方々を対象としたもの(例えばチュートリアルなど)も企画中です。今後も学会のメーリングリスト等でご案内致しますので、是非、ご参加を検討して頂けましたら幸いです。



やぐち たかはる
神戸大学大学院システム情報学研究科
[Article: I1511A]
(Published Date: 2016/06/11)