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研究部会だより

機械学習研究部会の紹介

杉山将,竹内一郎



機械学習とは,データからその背後に潜む知識を自動発見するための技術の総称である.機械学習の研究は,1980年代に人工知能の一分野として始まり,その後の計算機の劇的な性能向上と相まって飛躍的に発展してきた.近年の機械学習の技術は,確率論,統計学,最適化理論,アルゴリズム論などを数理的基礎にしており,画像,自然言語,音声,ロボット,生命情報,脳,医療など様々なデータの解析に用いられるようになった.

このように発展著しい機械学習分野の研究活動を更に促進するためには,基礎数理と実世界応用の研究者が密に情報交換を行うことが重要である.そこで,既存の学問分野の壁,及び,大学,研究所,企業等の組織の壁に捉われない形で機械学習に関する議論ができる場を設けることを目的として,2011年秋に機械学習研究部会を設立した.初代主査は東工大の杉山将が務め,IBMワトソン研の井手剛,東大の鹿島久嗣,名工大の竹内一郎,産総研の津田宏治,ニコンの中島伸一が初代幹事に就任した.

2012年8月の年会において本研究部会初のオーガナイズドセッションを開催し,鹿島が「テンソル分解による多項関係予測」,中島が「変分ベイズ法の理論解析」,竹内が「機械学習における非凸最適化のためのホモトピー法」,杉山が「密度比推定による機械学習」に関して講演を行った.約50名の参加者が活発に質疑を行うことにより機械学習技術に関する理解を深めたとともに,本研究部会の活動を学会員にアピールすることができた.

2013年9月の年会では,機械学習と最適化に関するオーガナイズドセッションを企画した.研究部会の竹内が「スパース最適化におけるスクリーニングとその機械学習への応用」,豊田工大シカゴ校の冨岡亮太氏が「凸最適化に基づくテンソル分解」,阪大の河原吉伸氏が「劣モジュラ最適化を用いた構造正則化学習とその応用」,九大の畑埜晃平氏が「オンライン離散最適化」について講演を行い,立ち見が出るほどの聴衆を集めた.

また,本学会和文論文誌にて本研究部会の特集号を2013年9月に刊行し,発展著しい機械学習分野の最新トピックの数理的な詳細を本学会会員に紹介した.特集号では,研究部会の中島が「変分ベイズ学習理論の最新動向」,竹内が「機械学習アルゴリズムのためのパラメトリック計画法」,杉山が「確率分布間の距離推定:機械学習分野における最新動向」,豊田工大シカゴ校の富岡亮太氏が「スパース正則化学習の理論とアルゴリズム」,東工大の鈴木大慈氏が「統計的学習理論概説」と題した論文を寄稿した.

また本研究部会は,本学会監修の「応用数理ハンドブック」(朝倉書店)の「機械学習」分野を担当した.研究部会の鹿島が「グラフと学習」,中島が「行列の学習」,津田は「カーネル法」,杉山が「密度比推定」,産総研の赤穂昭太郎氏が「パターン認識」,統数研の持橋大地氏が「ベイズ推定」,名大の金森敬文氏が「統計的学習理論」,IBM東京基礎研の森村哲郎氏が「強化学習」と題した解説を寄稿した.

ビッグデータを用いたビジネスや社会応用が本格化し始めた今,機械学習技術の重要性は益々高まっている.機械学習研究部会では,今後も本学会会員に対して機械学習に関する有益な情報の提供を続けるとともに,学会内の他の研究部会と協調することにより,応用数理分野の更なる発展に資する予定である.本研究部会の活動に興味を持って下さっている学会員各位には引き続きのご支援をお願いするとともに,これまで機械学習とは関わりのなかった方にも積極的にご参加頂ければ幸いである.



すぎやままさし,たけうちいちろう
東京工業大学,名古屋工業大学
[Article: I1312A]
(Published Date: 2014/02/11)